犬神家の一族2018ネタバレ感想やあらすじの紹介【NEWS加藤シゲアキ主演ドラマ】

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2018.09.19

2018年12月24日、不朽の名作『犬神家の一族』がNEWS加藤シゲアキ主演スペシャル版ドラマ『犬神家の一族2018』として帰ってきます。

こちらの記事ではドラマ『犬神家の一族2018』のネタバレや感想とあらすじを紹介していきます!

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ドラマ「犬神家の一族2018」のあらすじや原作

 

 

ドラマ「犬神家の一族2018」あらすじと感想やネタバレ

 

ドラマ「犬神家の一族2018」のあらすじ

昭和22年、那須湖畔の本宅にて一代で犬神財閥を築いた犬神佐兵衛が莫大な財産を残し、家族に見守られながら他界した。その遺産の配当や相続者を記した遺言状は、長女・松子の一人息子・佐清が戦地から復員してから発表されることになっており、一族は佐清の帰りを待つことに。佐兵衛は生涯に渡って正妻を持たず、それぞれ母親の違う娘が3人、皆が婿養子をとり、さらにそれぞれに息子が1人ずついたが、対立し合っていた。
数カ月後、金田一耕助(加藤シゲアキ)は犬神家の本宅のある那須湖畔を訪れた。犬神家の顧問弁護士を務める古館の法律事務所に勤務する若林から、「犬神家で近々、血みどろの事件が起きるのでそれを防いでほしい」との手紙を受け取ったためであった。那須ホテルを宿泊拠点とした金田一は、湖畔から犬神家の豪邸を望んでいたところ、犬神家の養女である珠世の乗っているボートが沈みかかっているのを目撃し助けようとするも自らも溺れる間に、犬神家の下男・猿蔵が珠世を救出する。ボートには細工がされており、珠世が何者かに狙われたのはこれで3度目。その後、金田一がホテルに戻ったところ、若林が何者かによって毒殺されていた。どうやら若林は犬神家の誰かに買収され、法律事務所の金庫に保管している佐兵衛の遺言状を盗み見た可能性が。古館の依頼で、金田一は犬神家の遺産相続に立ち会うこととなった。
そんな中、ビルマの戦地で顔に大怪我を負い、ゴムマスク姿で佐清が帰ってきた。佐兵衛の遺言状は古館によって金田一の立ち会いのもと公開されることになる…。

 

ドラマ「犬神家の一族2018」の感想

 

 

 

 

 

ドラマ「犬神家の一族2018」のネタバレ

一代で財を成した犬神佐兵衛(里見浩太朗)が危篤状態にあり、犬神家の顧問弁護士・古館恭三(小野武彦)は、犬神家の全員が集まってから佐兵衛の遺言状を開封すると述べた。それは、佐兵衛の長女・松子(黒木瞳)の息子・佐清(賀来賢人)が戦地ビルマから復員するのを待つことを意味する。全員が揃わない場合は、佐兵衛の一周忌に遺言状を開封することになる。そんな中、佐兵衛が息を引き取った。 私立探偵・金田一耕助(加藤シゲアキ)は古館の部下である若林豊一郎(少路勇介)の依頼を受け、この地へやってきた。若林の指示で那須ホテルに滞在することなり、金田一は2階の客室へと上がる。金田一が那須湖畔に面した窓を開けると、ボートを漕ぐ野々宮珠世(高梨臨)が目に入る。珠世の異変に気がつき、金田一は大急ぎで救出へ向かうが、犬神家の下男・猿蔵(大倉孝二)が珠世を救出した後だった。珠世が乗っていたボートには、誰かが故意に開けたとされる穴が見つかった。 金田一が宿に戻ると、那須ホテルの主人・弥助(田鍋謙一郎)が若林の到着を知らせるが、若林の姿は見当たらない。若林が吸ったと思われるタバコが、火がついたまま灰皿に置かれていた。女中・美代(平祐奈)の悲鳴が響き渡り、金田一が駆けつけると、息絶えた若林が倒れていた。那須警察署の署長・橘重蔵(生瀬勝久)に連行された金田一は、鑑識係・藤崎正一(梶原善)から若林の肺に毒物反応があったことを聞き、タバコに毒が混入された疑いを持つ。さらに、毒がタバコ1本のみに付着していたことから、毒を仕込んだ犯人は若林がいつ死んでもいいと思っていたことまで推理するのだった。 金田一は一通の手紙を古館に見せた。犬神家で血みどろの事件が起きるのを防いでほしいと若林が金田一に調査を依頼する内容で、金田一は古館に心当たりがないか尋ねると、金庫にしまっておいた佐兵衛の遺言状が何者かに読まれた形跡があると言うのだ。この金庫の開け方を知っていたのは、古館と若林だけだった。若林が犬神家の誰かに買収されたか、脅迫されたか、若林の方から何らかの見返りほしさに誰かに開封して見せたか…若林が佐兵衛の養子である珠世に思いを寄せていたことが、古館の頭をよぎる。

佐清が戦地から戻り、佐兵衛の遺言状を開封する日がやってきた。金田一は古館から立ち会いを頼まれ、犬神家へ向かう。 黒い頭巾姿の男の登場に、一同は騒然となる。男が頭巾を外すと、首まですっぽりと覆われた白いゴムマスクが現れ、その下からただれた素顔が露わになった。松子は、佐清は戦地でひどい傷を負ったのだと言う。 古館が佐兵衛の遺言状を読み上げると、犬神家の全財産と全事業の相続権を意味する三種の家宝『斧(よき)』『琴(こと)』『菊(きく)』は、次の条件の下、珠世に譲ると書かれていた。条件と言うのは、珠世が佐兵衛の3人の孫である佐清、佐武(笠原秀幸)、佐智(坂口涼太郎)の中から配偶者を選ぶことであり、この3人が死亡した場合には、珠世は自由に結婚相手を選ぶことができる。もし珠世が相続権を喪失した場合には、犬神家の全財産は公平に5等分され、5分の1ずつを佐清、佐武、佐智に与え、残りの5分の2を青沼菊乃(安藤聖)の息子・静馬に与えるものとすると記されていた。遺言状の内容に納得がいかない佐兵衛の次女・竹子(松田美由紀)や三女・梅子(りょう)は口々に文句を言うが、古館はこの遺言状は正式なものだから取り消すことはできないと言った。 佐兵衛には生涯を通して正妻はおらず、松子・竹子・梅子は佐兵衛が3人の妾にそれぞれ産ませた子供だった。3人の妾はすでに亡くなっている。松子の夫は10年前に病死して、松子は佐清との2人家族。竹子は、婿養子の寅之助(佐戸井けん太)と息子の佐武の3人家族。梅子も婿養子の幸吉(板尾創路)と息子の佐智の3人家族。 珠世は、佐兵衛の恩人の孫だ。17歳だった佐兵衛は那須神社の神主・野々宮大弐と晴世夫妻に世話になったのだ。6年前に珠世の両親が亡くなったため、佐兵衛が養女として珠世を引き取った。使用人の猿蔵は、珠世が幼い頃から身の回りの世話をしていて、珠世と共に犬神家へやってきた。珠世が何度も嫌がらせを受けている経緯から、古館は遺言状の内容を先に知った人物が珠世の命を狙ったのではないかと推理する。しかし金田一は、犯人が被害者を装う自作自演の可能性もあると話すのだった。 佐兵衛が50歳を過ぎて見初めた菊乃との間に、静馬が誕生した。佐兵衛が待ち望んだ男児であり、犬神家の正統な後継者である静馬に、三種の家宝が贈られた。ところが、菊乃は幼い静馬を連れて姿を消してしまったのだ。この地方では、斧のことを『よき』と言い、『よき ことを きく』というめでたい言葉をもじって作られた『斧』『琴』『菊』は那須神社に神器として祭られていたのだが、当時の神主・大弐が佐兵衛の事業の成功を記念して贈ったものだった。

金田一と古館は佐武と佐智に呼ばれ、那須神社を訪れる。神主・大山泰輔(品川徹)が差し出したのは、佐清が出兵前に奉納した手形だった。復員した佐清が本物なのか疑う佐武と佐智は、この手形と復員した佐清の手形が一致するか確かめようとしていた。 その頃、珠世は佐清に声をかけ、壊れた懐中時計の修理をお願いした。佐清は懐中時計を手に取ったものの、珠世に突っ返すとその場を立ち去った。 珠世と古館が見守る中、竹子や梅子たちは佐清に手形を取らせようと松子に詰め寄るが、松子は無礼だと怒って部屋を出ていってしまう。 翌日、金田一が古館に呼ばれて犬神家へやってくる。庭に置かれた菊人形の首が、佐武の頭部に入れ替わっていたのだ。竹子は地面に転がり落ちた佐武の頭部を抱き、泣き叫んでいる。その様子を見た梅子は「これは呪いよ」とつぶやく。第一発見者は猿蔵だった。金田一が殺害現場である展望台へ行くと、地面についた血の量から判断して、佐武は心臓が止まってから首を切り落とされたことがわかる。金田一が殺害現場の周辺で珠世のブローチを見つけたため珠世に事情を聞くと、珠世は昨夜無くしたものだと認めた。昨夜11時頃、珠世は佐武を展望台に呼び出し、復員した佐清の指紋がついた懐中時計を手形との照合に使うように言い、佐武に懐中時計を渡した。佐武は犬神家の財産目当てで珠世に求婚し、嫌がる珠世に襲いかかる。間一髪で猿蔵が救出し、珠世を連れて立ち去ったのだった。 竹子が、佐武を殺したのは松子と佐清だと騒ぎ立てる中、佐清が手形を押すと言い出した。すぐに関係者が集められ、みんなが見守る中で佐清が手形を押すと、橘は鑑定にまわすと言って出ていった。自分の部屋に戻った珠世は、復員兵のような格好をした男と出くわし悲鳴をあげる。 その後、背後から刃物で心臓を刺しぬかれた佐武の胴体が、湖で発見された。金田一は懐中時計の行方を気にするが、見つからなかった。 手形の鑑定により、白いゴムマスクの男が佐清だと証明され、松子は胸をなでおろしている。 佐智もまた財産目当てで珠世に手を組まないかと持ちかけるが、珠世に断られてしまう。そこで、佐智は珠世を気絶させて廃屋へ連れ込み、襲いかかろうとする。しかし、佐智は背後から殴打され、地面に倒れ込むのだった。目を覚ました珠世は、自分の部屋のベッドにいた。胸元には、珠世の純潔が守られていることを告げる手紙があった。 翌朝、梅子が屋敷内を捜しまわると、木に吊るされた佐智が発見される。佐智の首には琴の弦が巻かれていた。梅子は「まだ続く。呪いで全員殺される」とわめき散らすのだった。金田一は、弦は死因には関係なく、もっと太い紐か何かで絞められていると考えた。

佐武と佐智、2つの殺人は犬神家の家宝が関連している。しかし、どちらも直接の死因に家宝は関係なく、殺された後に家宝になぞらえた工作がされているのだった。 さらに、猿蔵の証言により、佐智が夕方5時頃までは生存していたことがわかった。珠世が廃屋にいることを知らせる匿名の電話が猿蔵宛てにあり、猿蔵が廃屋へ駆けつけると、気を失って横たわる珠世と柱に縄で縛りつけられた佐智がいたのだった。猿蔵は助けを求める佐智を放置して、珠世を抱きかかえ廃屋を出ていった。 その後、金田一が廃屋で何者かがたき火をした跡を見つけ、廃屋で誰か見なかったかと金田一に尋ねられた珠世は、思い当たる節がありながらごまかす。 アリバイを尋ねられた松子は、盲目の香琴(梶芽衣子)による琴の稽古中だったと話す。金田一は呪いについて尋ねるが、松子はしらを切る。そこへ竹子と梅子が「嘘つき。全部あんたのせいよ」と松子を罵りながら部屋へ入ってきた。30年前、この三姉妹は菊乃に暴力を振るい、犬神家の家宝を奪い取っただけでなく、松子は熱した火箸を赤子の静馬の脚に押し当てたのだ。血みどろの菊乃は「地獄へ落ちろ。許さない。お前たちを呪ってやる」と、三姉妹に向かって呪いの言葉を吐いた。菊乃の呪いにより自分の息子が殺されたと思い込む竹子と梅子は、「あんたも佐清も殺されちまえ」と松子に吐き捨てて屋敷を出ていった。金田一の報告により、30年前の菊乃・静馬の失踪の謎が解け、翌日、廃屋周辺の捜索が行われることになった。 松子は佐清との祝言の時に使うようにと反物を珠世に差し出すが、珠世は「お断りします」と言って部屋を出ていってしまう。松子が佐清を追って外へ出ると、佐清はタバコを吸っていた。佐清がいつタバコを覚えたのかと松子が不思議に思っていると、佐清が背を向けたまま笑い出した。 翌日、湖で男性の遺体が発見された。遺体は逆立ちをする格好で、太ももから爪先までが湖面から出ていた。遺体の顔がただれているのを確認した橘や古館は佐清の遺体だと思っているが、金田一は遺体の指紋も調べるよう念押しをする。すると、藤崎は珠世からも同じ依頼を受けたのだと話し、金田一を驚かせた。死因は鈍器のようなもので殴られたことによる脳挫傷だった。橘は凶器が斧ではなかったため犬神家の家宝は関係ないと断言するが、金田一はこれも呪いだと言う。佐清が逆さになっている。つまり『ヨキケス』と名前を並べ、上半身が水没しているため『キ』と『ケ』の間に横一直線を引くと、残りは『ヨキ』となる。これは家宝の『斧』を表しているのだった。その上、湖の近くの草むらから凶器の金づちが発見され、猿蔵の持ち物であることがわかった。橘は連続殺人事件の真犯人は猿蔵だと言うが、金田一は否定した。鑑定により、引き揚げた遺体の指紋と神社に奉納されていた手形が一致しなかったことがわかると、金田一は「その真相を知る人物に確かめに行きましょう」と言い、橘や古館と一緒に犬神家へと向かう。

その頃、犬神家では復員兵の男が珠世の部屋に押し入るが、佐清だとわかると、2人はしっかりと抱きあった。佐清は珠世に手紙を渡し、別れを言って走り去ってしまう。珠世から佐清が死ぬつもりだと聞いた金田一たちは、佐清の後を追う。逃げ場がないと判断した佐清はピストルを取り出し、自分のこめかみに銃口を当てたが、猿蔵が止めに入った。佐清が書いた手紙には、連続殺人事件の犯人は自分であり、自分以外の誰も関係がないとあった。佐清は警察署に連行され全てが解決したように思えたが、金田一は「謎解きはここからです」と言う。 犬神家の大広間に、松子、珠世、古館、橘が集められた。金田一から、佐兵衛は晴世と菊乃への特別な思いから珠世と静馬に有利な遺言を残したのではないかと聞かされた松子は、不愉快になり席を立とうとするが、「会ってほしい人物がいる」と言われて金田一に止められる。松子が襖の向こうに目をやると、手錠をつけた佐清がいた。松子は息子の無事を確認し、安堵する。金田一は、白いゴムマスク姿で一族の前に現れ、湖で逆さまになっていた遺体は静馬だと言う。 佐清が戦地に赴き3ヵ月が過ぎた頃、隣の部隊に佐清によく似た人物がいると噂を聞き会いに行くと、瓜二つな人物は静馬だった。その後、倒れた上官に代わり佐清が部隊の指揮を任されるが、全滅してしまう。仲間を大勢失い、ビルマの日本軍も壊滅状態だった。当然静馬も戦死したとばかり思っていたが、違った。新聞か雑誌で、犬神家の一族が全員揃い遺産相続をめぐる争いが起きていることを知った佐清は、佐清になりすまし犬神家に戻ったのは静馬に違いないと確信した。佐清が急いでこの町に戻った時に佐武や佐智が珠世に乱暴しようとしたのを目撃してしまい、2人を殺したと話すのだった。さらに佐清は静馬を殺したことを認めるが、金田一は「本当の犯人は…松子さん。あなたですよね?」と言い、一同を驚かせる。佐清は自分が殺したの一点張りだが、金田一に松子が守りたかった大切な人が殺人犯になってしまうと言われ、松子はようやく口を開いた。 自分の遺産の取り分が気になった松子は、若林を丸め込み遺言状を読むと、怒りが込み上げた。その後、何度も珠世の命を狙ったが失敗に終わり、珠世を殺しても静馬に遺産の5分の2を取られてしまうため、殺すのがバカらしくなって止めたのだと言う。佐兵衛は珠世の命を守ろうとしていたのだった。松子が珠世を殺そうとしたことに気がついた若林は松子に遺言状を見せたことを後悔したため、松子は若林の口封じをしなければと思い、若林のタバコを毒入りのものにすり替えた。

松子は佐清と珠世が恋仲にあることを知っていたため、佐清が復員すれば2人は結婚して丸く収まると思っていたが、復員してきた佐清の顔を見て危機感を持った。予想は的中し、松子は珠世が心変わりしたように見えたが、珠世は白いゴムマスクの男が佐清だと思えなかったからだと話す。松子は佐清が不憫で、佐武と佐智を殺したのだと言う。金田一は3つの事件とも、殺害した人物と遺体処理をした人物は別だと考えていた。遺体の工作は、静馬と佐清が行ったものだった。珠世が展望台で佐武に襲われたあの夜、すぐ側で佐清は静馬に接触していた。松子が佐武を殺害するのを佐清と静馬が目撃してしまったために、静馬は言うことを聞くように佐清を脅迫してきたのだ。静馬の発案で佐武の遺体に細工を施した。静馬は残虐に見せた方が女性の仕業だと疑われないと言いながら、心の底から憎む犬神家の一族に恐怖を与えたいと思っていたのだ。 手形が一致したのは、静馬に強要されて、手形を取る時だけ静馬と佐清が入れ替わっていたからだった。つまり、珠世の部屋に忍び込んだ復員兵は静馬だったのだ。静馬は自分の指紋がついた懐中時計を取り戻そうとしたが、松子がずっと隠し持っていた。 佐智から乱暴されそうになった珠世を救ったのは、廃屋で身を隠していた佐清だった。佐清は佐智を殴り気絶させた後で縛り上げ、珠世の胸元に手紙を入れ、猿蔵に連絡した。佐清は町を出ようと思い、汽車に乗るお金を借りに静馬に会いに行った。すると、廃屋から戻った佐智の首に松子が紐をかけ、殺害する現場を見てしまったのだった。この時、松子は右手の人さし指を痛めてしまった。松子は琴の稽古中に5分ほど中座し佐智を殺害した後、何食わぬ顔で琴の演奏を始めた。しかし、松子は指を痛めたことを隠しきれず、香琴に気づかれていた。 静馬がタバコを吸う姿に松子が驚いたあの夜、静馬はふくらはぎにつけられた火傷の痕を松子に見せて、自分が静馬であることを打ち明けた。松子は静馬が菊乃の恨みを晴らそうとしていることを知る。静馬は自分を追い出そうとすれば、松子の殺人をばらすと脅した。そして、静馬の口から佐清が死んだと聞かされた松子は、その場にあった金づちを何度も振り下ろし、静馬を殴り殺していた。返り血を浴びた松子は、通りがかった猿蔵に、珠世が警察に連れていかれたくなければ静馬の遺体を始末するよう命じた。猿蔵は珠世に疑いがかからないよう、静馬を逆さまにして呪いを完成させた。草むらに金づちを捨てたのも、猿蔵が自分に疑いの目を向けるためだった。松子が静馬を殺害した頃東京にいた佐清は、静馬が死んだことを知り、松子をかばうために戻ってきた。自分が罪をかぶり自殺すればすべてが終わると思ってのことだった。後悔する松子を見た金田一は、佐兵衛の遺言状は松子・竹子・梅子を結果的に苦しめ、30年前に佐兵衛が愛した菊乃を苦しめた3人への復讐が皮肉にも完遂されてしまったのだと話す。 佐清には情状酌量の余地があると言う古館の言葉を聞き、佐清と珠世が互いに想いあう姿を見た松子は安堵した。松子は煙管(きせる)を吸い佐清と珠世に犬神家を託す言葉をかけていたが、松子が口から血を流してその場に倒れ込む。若林が死んだのと同じ毒が松子のタバコに入っており、松子は自ら死ぬ道を選んだのだ。 犬神家に起きた連続殺人事件を解決に導いた金田一は、弥助と美代に見送られ、那須ホテルを後にするのだった。

 

(佐兵衛)うっ…。 はっ。
(松子)お父さま。 ご遺言は…。
ご遺言が ございましたら
おっしゃってくださいまし。
(古館)佐兵衛さまの ご遺言状は
私が お預かりしております。
(竹子)遺言状?
そんなもの あったの?
(梅子)いつの間に
書いたのかしら。 お父さまったら。
(寅之助)今すぐ 開けてくれ。
(幸吉)そうや そうや。
(竹子)あなた。
(古館)この遺言状は
犬神家の皆さま 全員が
お集まりになったときに
開封するよう
仰せ付かっております。
(竹子)もう 全員
集まってるじゃないの。
(古館)松子さまの ご子息の
佐清さんが まだ。
(竹子)でも 佐清さんは
まだ ビルマから
復員されてないのでしょ?
(梅子)不吉なことを 言って
松子さんには 悪いけど
このまま 戻ってこなかったら…。
(松子)佐清は
必ず 戻ってきます。
(古館)お集まりになれない場合は
佐兵衛さまの ご遺志によって
一周忌の日に
開封することと なっております。



(医師)ご臨終です。

(金田一)那須ホテル。
(金田一)ここか。 ホテル?
ごめんください。
≪(美代・弥助)はい。
(金田一)弁護士の 若林さんに
こちらに 泊まるよう
言われたのですが。
(弥助)お名前は?
(金田一)金田一です。
金田一 耕助と 申します。
(弥助)金田一さん?
(美代)ああ! 若林さんが
おっしゃってました。
東京から
とっても優秀な 探偵さんが
いらっしゃるって。
いやぁ。 何の 何の。
(弥助)あなた 本当に探偵ですか?何か 証明するものは?
ああ。 困ったな。
(美代)汚っ。
ご主人。 あなた 腰を悪くして
戦争 行きませんでしたね。
(弥助)えっ?
その げた ご主人のでしょ?
左側だけ かなり すり減ってる。
重心が悪く そういう方は
ひどい 腰痛持ちです。
ああ。 それに 最近 この宿
売り上げが 芳しくないのでは?
(弥助)えっ?
(美代)何で 分かったの?
ご主人の 髪の毛
襟足が まばらです。
おそらく 散髪代を ケチって
奥さまに
切ってもらっているのでしょう。
それに シャツの襟首が
汚れているのも
洗濯代を 節約している証拠だ。
(美代)すごい!
部屋は 2階かな?
(美代)はい。
ああ。 ご主人。
弁護士の 若林さんに
金田一が 到着したと
お伝えください。
(弥助)はい。
へえー。 いい眺めだな。
あの お屋敷は?
(美代)犬神さまの お屋敷です。
あの婦人も 犬神家の人?
(美代)珠世さまです。
亡くなった 佐兵衛さまが
生前
養子に迎えられた お方ですよ。
ほう。
うん?
あっ…。
えっ?

えっ? あっ。
うん?
よかった。
ご無事でしたか?
(珠世)ええ。
(珠世)ボートに 穴が。
えっ?
誰かが わざと
開けたような穴ですね。
(弥助)ああ。
お部屋に 弁護士の 若林さん
いらしてますよ。
ああ。 はい。
お待たせしました。
あれ?
≪(悲鳴)
えっ? 何?
あっ。 どうしたの?
えっ?
あっ!
こ… この人 誰?
(美代)弁護士の 若林さん。
えっ?
死んでる。
な… 何で
僕が 容疑者なんですか?
(橘)第一発見者を 疑うのは
捜査の鉄則だ。
取りあえず 逮捕。
(多田)かしこまりました。
ちょっと待って。
それをいうなら
第一発見者は 僕じゃなくて
女中の 美代ちゃん。
僕は 亡くなった 若林さんに
呼ばれた 探偵です。
(橘)探偵? お前が?
≪(藤崎)失礼します。 橘署長。
(橘)おう。
(藤崎)鑑識の結果
毒物反応が 出ました。
(橘)そうか。 早速…。
毒物は 胃からですか?
(藤崎)肺からであります。
(橘)おい。
肺。
じゃあ やっぱり あの たばこか。
毒が 交ざっていたのは
たばこ全部ですか?
それとも 一本だけ?
(橘)お前。
(藤崎)一本だけであります。
(橘)お前も 答えんでいい。
一本だとすると
毒入りの たばこを
いつ 吸うか 分からない。
つまり 犯人は
若林さんが
いつ 死んでもいいと 思っていた。
(橘)あのなぁ。
この方法だと
犯人は 被害者の近くに
いなくても 殺人を 達成できる。
ああ。 何と 巧妙な。
(橘)聞け! 探偵とやら!
はい?
(橘)何 勝手に
推理してんだ?
(橘)駄目だろ。
お前 容疑者なんだから。
取りあえず 逮捕。
(多田)かしこまりました。
(古館)橘署長。
(橘)ああ。 古館さん。
(古館)実は 東京の同業者に
確認したのですが。
どうも その方 本当に
高名な 私立探偵のようで。
(橘)何?
お前。 名前は?
だから 金田一です。
金田一 耕助と 申します。
(多田)えっ!?
あの 金田一さんでありましたか。
(橘)お前 知ってんの?
(多田)はい。
(多田)頭脳明晰。 勇猛果敢。
数々の難事件を 解決に導いた
名探偵殿で あらせられます。
はい。
(古館)「ぜひとも 尊台に
お願い申し上げたいことが
あるのです」
「近く 犬神家の一族に
幾人も 幾人も 犠牲者が出る
血みどろの事件が
起こるやもしれぬと
憂慮しております」
「ぜひとも 金田一先生に
ご調査を 仰ぎたく」
若林が こんな手紙を あなたに?
この本も 一緒に
送られてきました。
『佐兵衛伝』を。
ええ。
殺された 若林さんは
何を そんなに
心配していたんでしょうね。
古館さん。
何か 心当たりは?
実は 亡くなった 佐兵衛さまの
遺言状が
何者かに
読まれた形跡が ありまして。
遺言状?
誰も 開封せぬよう
金庫の中に しまっておりました。
ああ。
この金庫の 開け方は?
知っていたのは
私と 若林しか おりません。
となると 若林さんが
犬神家の誰かに
買収されたとか。
買収!?
または 脅迫。
あるいは 逆に
若林さんの方から
何らかの見返りを 求めて
誰かに 開封して 見せたとか。
いや。
若林に限って そん…。
ああ。
何か?
若林が 思いを寄せていた方が
おります。
誰ですか? それは。
佐兵衛さまの 養子の
野々宮 珠世さんです。
珠世さん。


わっ! 古館さん。
(古館)おはようございます。
おはようございます。
実は 昨晩 遅く
佐清さんが 突然 戻られました。
あっ。 じゃあ いよいよ
遺言状 開封するんですね。
金田一さん。
これから 私と 一緒に
犬神家へ
行っていただけませんか?
犬神家に?
行きます!
(女性)お着きになられました。
(古館)皆さん。
お待たせいたしました。
(竹子)古館さん。 その お方は?
(古館)立会人として お呼びした
探偵の 金田一…。
(梅子)立会人?
何です? それは。
松子さまには
ご了解を 得ておりますが。
(竹子)また。 私たちの
知らないところで 勝手なことを。
(梅子)昨日も 突然 夜中に
こっそり 帰ってきたっていうしね。
(幸吉)おいおい。 おい。
(梅子)いつも そうなの 勝手な…。
えっ?
古館さん。
全員 揃いました。
その方が 佐清さんで?
(松子)ええ。
訳あって 頭巾を
かぶせております。
できれば
お顔を 拝見できないかと。
佐清が 偽者だと おっしゃるの?
(古館)いえ。
弁護士として
確認をしたいだけで。
(竹子)私も 佐清さんの お顔を
拝見したいわ。
これじゃ どこの誰だか
さっぱり 分からないもの。
(梅子)博多に
迎えに行くっていって
半月も 戻ってこないんですもの。
怪しいわよ。 ねえ。 あなた。
(幸吉)いえ。 それは まあ…。
(竹子)あなたも
何か おっしゃいなさい。
(寅之助)そ… そうね。
あ… あのう…。
分かりました。
皆さんが
そこまで おっしゃるのなら
致し方ありません。
佐清。
頭巾を 取っておやり。
あっ!
その仮面も めくっておやり。

(一同)うわっ!
何や あれ。
(松子)佐清。 もう よい。
仮面を お下ろし。
(松子)佐清は お国のために戦い
顔に ひどい傷を 負ったのです。
ですから この仮面を 東京で
半月かけて 作ってきたのです。
それなのに あなた方は
冷たい言い方ばかりして。
(幸吉)そういうつもりは…。
(松子)古館さん。
もう よろしいかしら?
あっ。 ああ…。
あのう。 皆さんは…。
皆 異存は ないようですわ。
(古館)分かりました。
それでは。
「遺言状」
「一つ。 犬神家の全財産
ならびに
全事業の相続権を 意味する
三種の家宝 「斧」 「琴」 「菊」は
次の条件の下
野々宮 珠世に
譲られるものとする」
(一同)はっ?
「一つ。 野々宮 珠世は
その配偶者を
犬神 佐兵衛の 3人の孫
佐清 佐武 佐智の中より
選ぶこと」
「一つ。 ただし
佐清 佐武 佐智の 3人が
死亡した場合 珠世は 何びとと
結婚することも 自由とす」
「一つ。 もし 野々宮 珠世が
相続権を 喪失した場合
犬神家の 全財産は
公平に 5等分され
その 5分の1ずつを
佐清 佐武 佐智に 与え
残りの 5分の2を
青沼 菊乃の 一子
青沼 静馬に 与えるものとす」
菊乃? 静馬?
(梅子)どういうことよ。 それは。
ど… どうして そんなこと
お父さま。
(寅之助)竹子のこと
何にも 書いてないじゃないか。
(幸吉)うちの 梅子のこともや!
(竹子)こんなの でたらめよ。
私は 認めないから!
(梅子)珠世さん。
どうして あなたばっかり
えこひいき されるのよ。
(珠世)私は…。
(古館)皆さん!
この遺言状は 正式な手続きを経て書かれたもんです。
もし 異議を
申し立てられても
取り消すことは
できないものであります。
(古館)「一つ。 犬神奉公会は
この遺言状が 公表されてより
1年以内に
全力を挙げて 青沼 静馬の行方の
捜索 発見せざるべからず」
犬神家の 一族って
かなり 複雑ですよね。
まず 亡くなった
佐兵衛さんの 奥さまが…。
(古館)佐兵衛さんは 死ぬまで
正式な奥方を
めとりませんでした。
えっ?
松子さま 竹子さま 梅子さまの
お母さまは 全員 別々で
佐兵衛さまの
めかけだったのです。
めかけ…。
ただ 3人とも すでに
鬼籍に 入っておられます。
(古館)松子さまの夫は
10年前に 病死し
このたび 戻られた
佐清さんと 2人の家族。
竹子さまは 3人家族。
夫で 婿養子の 寅之助さんは
犬神製糸の 東京支店長です。
息子は 佐武さん。
梅子さまも 3人家族で
婿養子の 幸吉さんは
犬神製糸の 神戸支店長。
息子の 佐智さんも
関西在住です。
佐兵衛さんは
3人も 娘がいて
なぜ 珠世さんを
養女にしたんです?
佐兵衛さまは 17のころ
那須の町に 無一文で
流れ着いたそうです。
そのとき 彼の世話をしたのが
当時 那須神社の 神主だった
野々宮 大弐氏と
晴世さんの ご夫婦でした。
「野々宮夫妻と 若き佐兵衛」
(古館)珠世さんは
その 野々宮ご夫妻の
お孫さんになります。
6年前 珠世さんの ご両親が
亡くなったので
佐兵衛さまが 養女として
引き取ることに なったのです。
使用人の 猿蔵は
珠世さんが 幼いころから
彼女の世話をしており
珠世さんが
養女になるのと 一緒に
犬神家で
働くようになりました。
珠世さんといえば…。
彼女が乗っていた ボートに
穴が開いて
沈みそうに なっていたんです。
またですか。
また?
以前も 車のブレーキが
壊されていたり
彼女のベッドに 毒蛇が
仕込まれていたことがありまして。
そんなことが。
そうか。
もしや 遺言状の内容を
先に知った者が
彼女の命を 狙っていた?
いや。 それは 分かりませんよ。
えっ?
よく あるんです。
犯人が 疑われないように
被害者を 装う。
つまり 自作自演。
あの 珠世さんが?
金田一さん。 あなた
何と 恐ろしいことを 考える人だ。
探偵という職業の人は…。
それで 最後に出てきた
青沼 菊乃と 青沼 静馬という
人物は 誰なんです?
はあ…。
佐兵衛さまが 50を越えたころ
工場で働く 女性工員を
見初めまして。
それが 青沼 菊乃さんという
女性です。
菊乃さんは
佐兵衛さまの 寵愛を受けまして
お二人の間に
お子さまが 生まれました。
それが 青沼 静馬です。
佐兵衛さまにとって 待ち望んだ
初めての 男の子であり
犬神家の 正統後継者。
そのため 静馬さんには
「斧」 「琴」 「菊」の
犬神家 三種の家宝が
贈られました。
ところが…。
しばらくして 菊乃さんは
幼い 静馬さんを連れ
町から こつぜんと
消えてしまったのです。
なるほど。 そんなことが。
これですね。
「斧」 「琴」 「菊」の 家宝って。
(古館)ええ。 この地方では
斧のことを
「よき」と 言いまして。
「よき ことを きく」という
めでたい言葉を もじって
作られました。
「斧」 「琴」 「菊」か。
もともとは 那須神社に
神器として
祭られていたのですが
当時の神主の 野々宮 大弐氏が
佐兵衛さまの 事業の成功を
祈念して 贈ったそうです。
それで 犬神家の家宝なんですね。
それにしても
どうして 佐兵衛さんは
犬神家の 一族に
骨肉の争いが起きそうな 遺言状を残したんだろう?
古館さん。 早く。
(大山)こちらでございます。
これは?
(佐智)佐清の手形や。
(大山)出征する際
武運長久を 祈願して
手形を
奉納していただきました。
これを どうするんです?
(佐武)あの 奇妙な仮面を つけた
男の手形を 取って
佐清君か どうか
確かめるんですよ。
≪(珠世)佐清さん。
(珠世)これ
覚えていらっしゃいますか?
おじいさまから もらった 時計。
(珠世)壊れてしまったの。
直してくださらない?
前は よく
直してくださいましたよね。
だから 佐清さんが
戦争から お戻りになるまで
お待ちしておりましたの。
お断りします。
(佐武)ふん。
松子おばさん。
何を 心配しているんです?
(佐智)手形 取られて
都合の悪いことでも
あるんですか?
何と 無礼な。
この子は 佐清です。
腹を痛めた 母の私が
言うんだから
これほど 確かなことが
ありますか。
(竹子)でも 世間じゃ
別人だって 噂されてるんですよ。
(梅子)新聞にも 犬神家が
遺産相続で 大もめって
面白おかしく 書かれてるしねぇ。
(幸吉)松子さん。
ここは 一発…。
手形 押しはったら どないですか?(松子)お黙りなさい。
佐清は 本来なら
犬神家の嫡男。
総本家の 跡取り息子なんです。
昔なら 殿様で
あなたたちは 家来も同然。
それなのに 手形を 押せだの
指紋を 取らせろだの
まるで 罪人を扱うかのように。
失礼にも 程があります。
佐清。


(古館)金田一さん。 こちらです。
何ですか?
何ですか? 慌てて。
(古館)いいから 早く!
あっ。 おはようございます。
(古館)とにかく
これを 見てください。
菊人形なら 拝見しましたよ。
犬神家の方々の 顔を…。
うん?
(悲鳴)
≪(寅之助)竹子! 竹子!
駄目だ。 駄目だ!
そっち 行っちゃ 駄目だ。
(悲鳴)
(竹子)佐武!?
(竹子)これが 佐武なの?
い… 嫌よ。
お母さん。 こんなの 嫌。

呪いよ。
これは 呪いよ。
呪い?
あっ。 君。
第一発見者は?
(警察官)使用人の 猿蔵です。
猿蔵さんか。
殺害現場は ここじゃないよね。
(警察官)あちらです。 どうぞ。
うん。
≪(警察官)失礼します。
(橘)えっ?
(警察官)金田一さんが
到着されました。
(橘)誰が
連れてこいと 言った?
こらこらこら。
勝手に 現場を歩くんじゃないよ。
ああ。 これ 犯人は
一度 完全に 殺害して
心臓が止まってから
首を 切り落としたようですね。
(古館)なぜ 分かるんです?
血の量が 少ない。
もし 生きているときに
首を切れば
心臓が 動いてるため
かなりの出血になるはず。
(古館)なるほど。
で 犯人は 遺体を運んで
ボートで 湖に捨てたようだな。
(橘)そんなことは 分かっとる。
なあ。 おい。
何だ? こいつは。
うーん。
うん?
ブローチ?
署長。 こんなものが。
(橘)貸せ。
誰のものか 確認する。
(古館)あっ。 これは。
(松子)《失礼にも 程があります。
佐清》
珠世さんのものです。
えっ?
何?
(珠世)確かに 私のものです。
いつごろ なくされたか
心当たりは?
(珠世)たぶん 昨夜。
ということは 珠世さんは…。
(せきばらい)
(橘)ということは
珠世さんは
昨夜 展望台に
行ったと いうことですな?
何時ごろですか?
(珠世)夜 11時ごろだったと
思います。
そんな時刻に? どのような用件があったんですか?
あそこで 佐武さんに
お会いしました。
内密に お話ししたいことが
ありましたので。

(珠世)《これを》
(佐武)《えっ?》
(珠世)《ここに 佐清さんの指紋が付いています》
《これを あの手形と
照合すれば
あの人が 本物か
分かるはずです》
(佐武)《なるほど。
でも どうして 僕に?》
(珠世)《熱心に 手形を
取ろうと されていたので》
(佐武)《フッ》
(珠世)《では》
(佐武)《待って》
《珠世さんも 彼が偽者だと
疑ってるんですね?》
《だったら こんな面倒なことせず僕と 結婚しましょう》
《必ず 幸せにします》
(珠世)《やめてください》
(佐武)《大丈夫。
悪いように しないから》
(珠世)《やめて…》
(佐武)《あっ》
《珠世さん》
(珠世)《嫌》
(佐武)《大丈夫だから》
(珠世)《嫌》
(佐武)《大丈夫だから》
(珠世)《やめ…》
(佐武)
《僕と 一緒になりましょう》
(珠世)《嫌》
(佐武)《何だ? お前》
《おい!
うっ》
(珠世)猿蔵に助けられて
そのまま 部屋へ戻ってきました。
どうも 信じられませんな。
それ 誰か 証人 いますか?
(珠世)それは この猿蔵しか。
(橘)この猿が 証人で
第一発見者? ハァー。
(竹子)この 人殺し。
(寅之助)竹…。
(竹子)どうせ お前と 佐清の
親子で 殺したんだろう?
(寅之助)竹子!
(竹子)この 鬼! 悪魔!
2人とも 死んじまえ!
(琴の演奏)


どうしたの? 佐清。
言いたいことが あるなら
おっしゃいなさい。
(佐清)母さん。 手形。
(松子)手形?
(佐清)手形 押します。
そう。 押してくれるの。


(幸吉)遅うなりました。
皆さん。 佐清が 自ら
手形を押すと
言ってくれました。
先日 手形を押すのを
お断りしたのは
皆さんの態度が あまりにも
無礼だったからです。
ただ 佐武さんが あのような
恐ろしいことになって
それが まるで 私と 佐清の
仕業のように 思われるのは
我慢なりませんから。
さあ 佐清。


よく ご覧くださいまし。
何の ペテンも いかさまも
ありませんよ。
(橘)拝見。
(橘)早速 鑑定に回します。
うーん。
≪(佐智)探偵はん。
佐武の遺体 見つかったんやろ?
ええ。
(佐智)で
犯人の目星 付いたんか?
いや。 そう 簡単には。
≪(悲鳴)
どうしました?
(珠世)部屋に 戻ってきたら
復員兵のような
格好をした男が そこに。
ここから 出ていったんですか?
(珠世)ええ。
(佐智)フッ。 ホンマかいな?
うーん。
(美代)終わりました…?
全然 食べてないし。
ああ…。
(美代)駄目よ。
ちゃんと 食べないと。
いや。 ちょっと 考え事してて。
(美代)汚っ。
ってか 臭っ。
えっ?
(美代)ねえ。 金田一さん。
いつ お風呂 入ったの?
ああ。 えっと。 うーん。
ハァー。
もう 今 お風呂 沸かすから
食べたら 入って。
いや。 今 それどころじゃ…。
(美代)いいから 食べる!
食べたら 入る!
はい。
(橘)復員兵が 部屋に?
どうせ 嘘だろ。
何のために 珠世さんが
そんな嘘 つくんですか?
怪しいんだよ あの娘は。
おはよう。
(一同)おはようございます。
(藤崎)ご報告いたします。
先刻 発見された胴体は
先日 頭部が発見された
犬神 佐武さんのものと
判明いたしました。
死因は 背後から 刃物で 心臓を
刺しぬかれたもようで あります。
あっ。 その遺体の どこかに
懐中時計は ありませんでしたか?
(橘)懐中時計?
珠世さんが 佐武さんに
渡したと
言っていたじゃありませんか。
(藤崎)所持品は
これといって 何も。
では 湖の中に 落としたか
あるいは
誰かが 遺体を 処理するときに
時計を 回収したか。
どうせ その懐中時計を
渡したという話も
嘘に決まっとる。 お茶。
(多田)はい。
あっ。 それで 手形の鑑定は?
(藤崎)結果は 出ています。
それが…。
(藤崎)この 2つの手形は
まったく 同一人物のもので
あります。
従って
そちらに いらっしゃる方が
犬神 佐清さんであることは
間違いありません。
(松子)ほら。 ご覧なさい。
これで 佐清 本人であることに
どなたも ご異存ないですね?

≪(足音)
(佐智)なあ。
俺と組んでくれへんか?
(珠世)組む?
(佐智)形だけでもええから
俺と 結婚してくれや。
犬神家の全事業は
俺が もらう。
そん代わり 金は 半分ずつや。
どや? ええ案と違う?

(珠世)あっ。
(佐智)俺 向いてへんねん。
手荒なことは。




≪(物音)
(佐智)誰や?
いんなら 出てこい!
(佐智)気のせいか。
チッ。 脅かしおって。
(佐智)うっ。
(珠世)私…。

(梅子)あなた。
あなた。
もう あなた!
(幸吉)何や?
(梅子)いないのよ。
(幸吉)まだ 明け方やぞ。
(梅子)佐智が 帰ってこないの。
(幸吉)どっかで
飲み明かしてんのと ちゃうか?
(梅子)もう!
まさか 今度は 佐智が?
(梅子)佐智。
(梅子)佐智。 佐智。

(梅子)佐智。 佐智は?
(女性)分かりません。
(梅子)佐智!
佐智。 佐智。 佐智!

(悲鳴)

これは 琴の弦。
(悲鳴)
(幸吉)落ち着かんかい。 梅子。
(梅子)呪いよ。 絶対 呪いよ。
(幸吉)呪いって 何や?
(梅子)まだ 続く。
呪いで 全員 殺されんの!
(幸吉)アホなこと 言うな。
(梅子)ああ…。
(橘)何だ? 呪いって。
≪(幸吉)分かった 分かった。
(藤崎)多田君。
頭 持ち上げてもらえますか?
(多田)はい。
(橘)ああ。 この弦で
絞め殺されたんだな。
いいえ。
弦は 死因には 関係ありません。
(橘)何?
(藤崎)もっと太い ひもか何かで
絞められてますね。
(多田)プッ。
(橘)なぜ 笑う?
(多田)失礼しました。
呪い。
佐武さんは
刃物で 刺された後
首を切られ 菊人形の上に
置かれていた。
佐智さんは 首を絞められ
殺害された後
木に つるされていた。
2つの殺人には
犬神家の家宝が 関連しています。
(古館)家宝と いいますと
「斧」 「琴」 「菊」のことですか?
はい。 佐武さんは 「菊」
佐智さんは 「琴」
あっ。 じゃあ 次は
佐清さんが 「斧」
つまり 斧で 殺されると?
(橘)おい。 ちょっと待て。
2人とも 殺された後に
「菊」や「琴」の工作が されていた。
直接の死因には 関係ない。
お前が そう 言ったんだろ?
そうなんですが。
それで 佐智さんの事件で
他に 分かったことは?
(多田)少なくとも
夕方 5時ごろまでは
佐智さんが 生存していたことが
判明しております。
それは なぜです?
(多田)珠世さんと 猿蔵が 証言を。
2人によると…。
(女性)猿蔵。
あんたに 電話よ。
(多田)猿蔵の元に
珠世さんが 廃屋にいると
匿名の電話が
あったそうなんです。
慌てて 廃屋へ
駆け付けてみたら…。
(佐智)《猿蔵。 よう 来た。
早う この縄 ほどいてくれ》
《うっ》
(佐智)《こら。 待たんかい。
ほどけ 言うとるやろ》
(多田)そのとき 佐智さんは
まだ 生きていたそうです。
ただ 自分は 珠世さんだけを
抱きかかえ その場を出ていった。
その後 佐智さんが どうなったか
分からないそうです。
うーん。
匿名の電話って いったい 誰が?
(橘)おい。 どこ 行くんだよ?
ちゃんと 閉めろ。


たき火?
誰かが あの廃屋で ここ数日
夜露を しのいでたようなんです。
誰か 見ませんでしたか?
何か 思い当たる節が
あるんですね?
(珠世)いえ。 何も。
(松子)昨日の夕方 5時から
琴の お稽古をしておりました。
琴?
(松子)香琴先生という
私の お師匠さま。
盲目であられるけれど
琴の名手でねぇ。
(琴の演奏)
(松子)いつも その時間
お稽古を つけていただくの。
お疑いなら 香琴先生に
聞いてごらんなさい。
あっ。 あと一つ。
呪いって 何ですか?
さあ?
梅子さんが
おっしゃってたんです。
まだ 続く。
全員 呪い殺されるって。
きっと 息子を殺されて
気が おかしくなって
しまったのでしょう。
(梅子)この 嘘つき。
(竹子)全部 あんたのせいよ。
(梅子)あのとき あんたが
あんなこと したから。
あんなこと?
何ですか? それは。
(松子)2人とも
少し 休んだら?
もう 我慢できない。
(竹子)私 言うわよ。
おやめなさい。
(竹子)30年前のこと
忘れたとは 言わせないわ。
(菊乃)《はーい》
≪(戸の開く音)
(菊乃)《えっ?》
(菊乃)《嫌》

(菊乃)《放して!》
(菊乃)《放して!》


(菊乃)《ああっ》
(梅子)《「斧」 「琴」 「菊」を
どこに隠した? お出し!》
(菊乃)《あれは 旦那さまから
坊やに 頂いたものよ》
(竹子)《何を 言ってんだよ。
あれは 私たちのもんだよ》
《出せ!》

(菊乃)《あんたたちなんかに
誰が》
(泣き声)
(菊乃)《静馬! 静馬!
静馬! 静馬! 静馬!》
《やめて!》
(松子)
《だったら 家宝を お出し》

(菊乃)《持っていけ》
(菊乃)《もう いいだろ。
その子を 返せ》
(竹子)《松子さん》
(梅子)《人が来る。 もう》

(泣き声)
(菊乃)《やめて》

≪(焼ける音)
(絶叫)
(菊乃)《静馬! 嫌!
静馬! 嫌!》
(菊乃)《地獄へ 落ちろ!》
(菊乃)《許さない。
恨んでやる》
《お前たちを 呪ってやる!》
(竹子)あんたのせいよ!
あんたのせいで 私の息子は
呪い殺されたんだ。
やれやれ。 何のことやら。
もう お帰りなさい。
(竹子)こんな家
言われなくても 出てってやる。
あんたも 佐清も
殺されちまえ。
どうぞ。
(古館)あの お三方が
そんな むごいことを。
あっ。 橘署長。
(橘)あっ?
実は 珠世さんが
連れ込まれた 廃屋に
何者かが 潜んでいた痕跡が
あったんです。
(橘)何?
(多田)誰なんですか?
いや。 それは 分かりませんが。
(橘)よし。 明日 夜明けとともに
廃屋周辺を 捜索するぞ。
(松子)珠世さん。
これ 祝言のときに お使いなさい。
(珠世)祝言?
(松子)私はね
佐清が 戦争に行く前から
あなたたちが 仲むつまじく
過ごしているのに
気付いていましたよ。
2人なら よい めおとに…。
(珠世)お断りします。
(松子)珠世さん。 待ちなさい。
(松子)佐清?
どこ 行くの?


(松子)佐清。
こんなところに いたのかい。
たばこ?
…なんて いつ 覚えたの?
(笑い声)
(松子)えっ?
(笑い声)
佐清。 お前。



(一同)下ろします。
お願いします。
(橘)はっ? 誰だ? こら。
おい 水。
(警察官)はい。
(橘)佐清だ。
(藤崎)お願いします。
(一同)はい。
(古館)やはり 佐清さんだったか。
あのう。
解剖するとき しっかり
指紋も 調べてくださいね。
(藤崎)先ほど
野々宮 珠世さんから
同じ依頼を 受けました。
珠世さんも?
(橘)どいつも こいつも 何を
ぐだぐだ 言っとるんだ?
この顔の傷 佐清で
間違いないだろ。
(橘)ここに いたのか?
おい 金田一。
はい?
死因が 判明いたしました。
鈍器のようなもので 殴られて
脳挫傷を 起こしていました。
鈍器。
斧じゃ なかった。
「斧」 「琴」 「菊」は 関係ない。
考え過ぎだ。
いえ。 これも 呪いです。
(橘)何でだよ?
発見したんです。
(多田)「ヨ」 「キ」 「ケ」 「ス」
(橘)はっ?
いいですか? スケキヨさんが
逆さになっているから
ヨキケス。
その上半身が 水没している。
ということは 残りは 「ヨキ」
つまり 斧です。
(一同)おお!
(橘)そうだ そうだ。
(多田)さすが。
お前 頭 いいなぁ。


(松子)佐清…。


(松子)《佐清が
偽者だと おっしゃるの?》
(松子)《佐清。
その仮面も めくっておやり》
(松子)《佐清が 自ら
手形を押すと 言ってくれました》
≪(悲鳴)
《どうしました?》
(珠世)《復員兵のような
格好をした男が そこに》
《たき火?》
(橘)《ちょっと待て。
2人とも 殺された後に
「菊」や「琴」の 工作が されていた。直接の死因には 関係ない》
《お前が そう 言ったんだろ?》
もしかして 犯人は…。


すいません。 遅くなりました。
(橘)どこ ほっつき歩いてた?
決定的な証拠が 出たぞ。
凶器だ 凶器。
湖の近くの 草むらに 落ちていた。これは 猿蔵のものだ。
謎は 全て 解けた。
この 犬神家 連続殺人事件の
真犯人は
猿蔵だ!
違いますよ。
指紋の鑑定結果 出ました?
(橘)いまさら
金づちに付いた 指紋など
調べるまでもない。
じゃなくて 逆さまになっていた
遺体の 指紋です。
それなんですが。
引き揚げた 遺体と
神社に 奉納されていた 手形が
一致しなかったでしょ?
そのとおりです。
(橘)どういうことだ?
その真相を 知っている
人物がいます。
(橘)誰だ? それは。
確かめに行きましょう。 犬神家に。
≪(ノック)
佐清さん?
(佐清)珠世さん。
(珠世)会いたかった。
(佐清)僕もだ。
(珠世)私は 信じておりました。
あなたが 生きていらっしゃると。
今日は お別れを
言いに来たんです。
(珠世)お別れ?
(佐清)これを。
珠世さん。 さよなら。
(珠世)待って!

佐清さん!
今 「佐清さん」と
おっしゃいました?
(珠世)はい。
今 佐清さんが ここに?
(橘)ここに?
(珠世)お願い。
佐清さんを 助けてください。
彼は 死ぬ気です!
(橘)おうおうおう。
あっ! いました!
(橘)あっ!

≪いたぞ!

(橘)待て!
おい。 捕まえろ! 捕まえろ!

佐清さん。
佐清さん!
(橘)やめろ。
(佐清)近づかないでください。
死んじゃいけません。

猿蔵さん!?
(叫び声)
(橘)「犬神家における
連続殺人事件の 犯人は
全て 私 犬神 佐清である」
「私以外の 何ぴとも
この事件には 関係がない」
「自決の 直前に当たって
このことを 告白する」
「犬神 佐清」
ここに 書いてあることは
真実だな?
はい。 間違いありません。
金田一。 これで 全て 解決だな。
一件落着だ。
いいえ。
謎解きは ここからです。
これから 犬神家にまつわる
凄惨な 連続殺人事件の
真実を
皆さんと 一緒に
解き明かしたいと 思います。
(古館)真実?
そもそも 最初に
僕が抱いた 疑問は
「なぜ 佐兵衛さんは あんな
遺言状を 書いたのか?」でした。
なぜ 娘の 松子さんたちの
名前がなく
血が つながっていない
珠世さんと
すでに亡くなっている 菊乃さんと静馬さんの名前が
書かれていたのか?
その理由を 知るため
那須神社の神主さんに
話を 伺ってきました。
(大山)《佐兵衛さまの ある種
恩返しとでも 申しましょうか》
《恩返し?》
《佐兵衛さまは
当時の神主で ありました
野々宮 大弐氏と 晴世さん
ご夫婦には
大変 お世話になったと
終生 おっしゃっていました》
(大山)《特に 奥方の
晴世さんに対しては
特別な思いを
抱いておられたようで》
《佐兵衛さまが 生涯
妻を めとらなかったのは
晴世さんに 心を
寄せていたからでは ないかと
私は 思っております》
佐兵衛さんにとって
晴世さんは 初恋の人だった。
そして 青沼 菊乃さんは
晴世さんと 同じ故郷の
出身だった。
2人の面影を 重ねて
菊乃さんを
心から愛したのです。
だから 初恋の人の孫である
珠世さん。
そして 心から愛した
菊乃さんの息子 静馬さんに
有利な遺言を 残したのでは
ないでしょうか?
なるほど。
佐兵衛さんは 経済界の
巨人などと いわれていましたが
実に 人間らしいと
思いませんか?
あんな男の どこが
人間らしいのです?
私や 竹子 梅子
そして 私たちの母親は
犬神 佐兵衛という男の
欲望のせいで
散々 苦しめられてきたのです。
そんな話をするために
呼びつけたのですか?
不愉快です。
お待ちください。
あなたに 会ってほしい方が
いるんです。
お願いします。
(古館)あっ!?
(松子)佐清。
(佐清)母さん。 佐清は
ただ今 戻りました。
何ということ。
でも よかった。
本当に よかった。
ちょっと待ってください。
そこに 佐清さんが
いるということは
今まで 仮面を
かぶっていたのは?
湖で見つかった 遺体は
誰だったんです?
(橘)そうだ。
あれは 誰だったんだ?
さっぱり 分からん。
あれは 青沼 静馬です。
静馬!?
(橘)んな バカな。
佐清さん。 あなたの口から
本当のことを 話してください。
(佐清)ビルマの戦線に 配属されて3カ月が 過ぎたころ
隣の部隊に 私に よく似た
人物がいるという 噂を聞き
会いに行きました。
それが
青沼 静馬でした。
私たちの顔が あまりに
うり二つで とても驚きました。
その後 戦局が悪化し
上官が倒れ
私が 部隊の指揮を執るよう
命じられました。
しかし 私の未熟さにより
部隊は 全滅。
仲間を 大勢 失いました。
ビルマの日本軍も 壊滅状態。
静馬も 当然 戦死したものだと
思っていました。 しかし…。
おそらく 佐清さんは
博多に 復員してきたとき
新聞か 雑誌で
犬神家の一族 全員が 集まり
遺産相続の 成り行きが
世間の耳目を 集めていることを
知ったのでしょう。
(佐清)はい。 驚きました。
私より前に
私が 帰国している。
誰かが 私に 成り済ましてる。
そのとき 思ったんです。
自分のふりを しているのは
静馬に 違いないと。
私は 急いで この街に
戻ってきました。
(佐清)そこで
佐武君や 佐智君が
珠世さんに 乱暴をしようと
したのを 目撃してしまった。
(佐清)だから 2人を
殺したのです。
(佐清)静馬も 私が殺しました。
本当に
申し訳ございませんでした。
(橘)そういうことだったのか。
いいんですか? 松子さん。
これで。
このままだと あなたが
守りたかった 大切な人が
殺人犯に なってしまうんですよ。
本当の犯人は…。
松子さん。 あなたですよね?
(橘)お前 何 言いだすんだ?
(古館)どういうことですか?
金田一さん。
(佐清)違う。 母さんじゃない。
私が 殺したんだ。
松子さん。 全てを話してください。あなたしか 知らない真実を。
(佐清)母さん。
何も言わなくていい。
もういいのです。
(佐清)母さん!
もう いいのですよ。
よく お分かりに なりましたね。
そのとおりです。
私が殺しました。 全ての人を。
私の母は 犬神 佐兵衛に愛されず
惨めなまま 死んでいきました。
私も同じ。 あの男に 愛情を
注いでもらったことなど
一度もない。
でも 別に 構わなかった。
遺産さえ もらえれば。
だって 私には
大切な 佐清が いるから。
でも あの 佐兵衛という男は
油断ならない。
だから 遺言状を
誰より先に 読みたかったの。


(松子)読んだ瞬間
言い尽くせないほどの
怒りが 込み上げた。
だから 珠世さんの命を
狙ったんですね。
(松子)でも
うまく いかないものね。
バカらしくなって やめたわ。
珠世さんを 殺したところで
結局 静馬に 遺産の 5分の2を
取られてしまうのだから。
なるほど。 これが
佐兵衛さまの 狙いだったか。
(橘)おい。 探偵。
どういうことだ?
珠世さんを 殺しても
犬神家の誰も 得をしない。
遺産が欲しければ
生かして 結婚するしかない。
あの遺言状は
珠世さんの命を 守るための
ものでも あったんです。
でも 若林に
気付かれてしまったのよ。
(若林)《珠世さんを
殺そうとするなんて》
《やはり 遺言状を
見せるべきでは なかった》
(松子)この男
いつか 誰かに しゃべる。
そう 思って…。
若林さんの たばこを
毒入りのものと
すり替えたんですね?
ええ。
(古館)私の大切な部下を よくも。
(橘)まあまあまあ。
落ち着いて。
あなたは 佐清さんさえ
戻ってくれば
珠世さんと 結婚し
丸く収まると 思った。
ただ 復員してきた
彼の顔を見て
危機感を 持ったのでは
ありませんか?
あの顔の傷じゃ
珠世さんは 佐清を選ばない。
思ったとおり 珠世さんの
佐清に対する 態度は
以前と
まったく 変わってしまった。
それは…。 あの人が 佐清さんだと思えなかったからです。
それが 私には 心変わり
したように 見えたのよ。
ふびんだった。 だって 大好きな
あなたと 結婚できないなんて
佐清が かわいそうじゃない。
だから 佐武さんと 佐智さんを
殺したんですね?
そうよ。
(佐武)《痛え。 チクショー》
(佐武)《うっ!?》

(せきばらい)
松子さん。 あんた
どうして 菊人形に
佐武君の首なんか
置いたりしたんだ?
違いますよ。 橘署長。
(橘)はっ?
あれを やったのは
彼女では ありません。
(橘)いやいや。
一番 驚いたのは
松子さん。
あなただったでしょうね?
(古館)じゃあ いったい 誰が?
僕は ずっと
引っ掛かっていました。
3つの事件とも 殺害方法は
至って 普通なのに
遺体の工作には
やたら 手を掛けている。
まるで 殺しと 遺体処理を
分業してるような。
だから 犯人は 複数いるのでは
ないかと 思ったんです。
(古館)複数!?
佐清さん。
遺体の工作は
あなたが 静馬さんと 共謀して
やったんじゃないですか?
佐清?
そんなはず ないわよね? 佐清!
そのとおりです。
(松子)どうして!?
(佐清)あの夜 私は ひそかに
犬神家に来て
静馬と接触しました。
(佐清)《いつまでも
だまし通せるわけないだろ》
(静馬)《なかなか 居心地が
いいよ。 あんたの実家は》
(佐清)《こんなこと
やめるんだ。 静馬》
≪(珠世)《やめて! やめて!》
(佐武)《ちょっと。
待って。 珠世さん》
(佐清)《珠世さん?》
(佐武)《珠世さん。
いいから。 いいから》
(佐武)《おっ!?
何だよ? 何だよ? おい!》

(静馬)《さて 俺は 部屋に戻って
うまい酒でも 飲むかな》
(佐清)《おい》
≪(佐武)《痛え。 チクショー》
(佐清)《母さん?》

(佐清)《母さん。
何てことを》
(笑い声)
(佐清)《何が おかしい?》
(静馬)《この事実
バラされたくなければ
俺の言うことを 聞け》
(佐清)《何?》
(静馬)《いいのか?
自分の母親が 人殺しになっても》
(佐清)死体に細工したのは
静馬の 発案でした。
より 残虐に見せた方が
女性の仕業だと 疑われない。
でも あいつの狙いは
それだけじゃ ありませんでした。
(佐清)静馬は 犬神家の一族を
心の底から 憎んでいた。
だから 全員に これ以上ない
恐怖を 与えようと 考えたんです。
あの手形が 一致したのは
なぜです?
手形を押したのは 私です。
偽者だと 疑われていたことに
気付いた 静馬が
手形を 取るときだけ
私に 入れ替われと
強要したのです。
われわれは
入れ替わりに 気付かず
まんまと だまされていたと
いうわけか。
(松子)私は あの日 自ら
手形を押すと 言ってくれて
佐清 本人だと
証明されたとき
涙が出るほど
うれしかったのよ。
どうして あのときに
名乗り出てくれなかったの?
(佐清)帰国しても この家に
戻るつもりは ありませんでした。
どうして!?
(佐清)私の責任で
大勢の仲間が 死に
私は 捕虜になりました。
犬神家の名を 汚してしまった
私が
生きて この家に戻る資格など
ないと 思ったのです。
珠世さんは
気付いていたんじゃないですか?
はい。 あのときの 佐清さんは
前と同じく 優しい目を
されていたので。
じゃあ あの日 珠世さんの部屋に
忍び込んだ 復員兵っていうのは。
あの復員兵は 佐清さんと
入れ替わった 静馬だったんです。
何のために 彼は?
おそらく 自分の指紋が 付いた
懐中時計を取り戻すためでしょう。
(松子)その時計は
これでしょう?
やはり あなたが
持っていたんですね。
(橘)なぜ これを?
あのときは
まだ 怖かったんです。
佐清が 偽者だと
証明されてしまったら
私が どうなってしまうのか?
(橘)あっ?
じゃあ 佐智君は? 彼は
廃屋の中で 縛られてたはずだ。
そもそも あの廃屋には
佐清さんが 身を隠していました。
珠世さんを 救ったのも
あなたですよね?
(佐清)はい。
(珠世)じゃあ やっぱり これは…。
(佐智)《うっ!?》
(佐清)佐智君を 殴って
意識を失わせた後 縛り上げ…。
(佐清)珠世さんの胸元に
手紙を入れ
猿蔵に 連絡しました。
(佐清)猿蔵が 珠世さんを
救い出すのを 見届けて
廃屋を出ました。
(佐清)もう あの廃屋には
いられない。
ならば このまま 町を出よう。
そう 思いました。
ただ 汽車に乗る金さえ
なかった。 だから…。
(佐清)《金を貸してくれ。
そしたら 姿を消す》
(佐清)静馬に 金を借りて
去ろうと 思っていたんです。
≪(足音)
(佐清)そこへ 佐智君が
廃屋から 戻ってきました。
(佐智)《チクショー。 あの猿。
覚えとけ!》
(静馬)《おい! おい!》
(佐清)すると そこへ…。



松子さん。 そのとき
指を痛めませんでしたか?
(松子)どうして それを?
あなたは あの晩
琴の稽古を なさっていたと
おっしゃっていた。
それを 琴の師匠に
確認しに 行ったんです。
≪(琴の演奏)
《ごめんください》
≪(琴の演奏)
(香琴)《ええ。 その晩 確かに
松子さんに
お稽古を つけておりました》
《ただ 途中で 松子さんが
用足しと おっしゃられて
一度 中座をされました》
《中座》
《どのぐらいの 時間ですか?》
(香琴)《ほんの
5分ほどで ございました》
(香琴)《ただ…》
《ただ?》
《お戻りになられた後
音色が 変わりました》
《音色が?》
(香琴)《中座をされたとき 何か
あったのでございましょう》
(香琴)《右手の 人さし指を
痛めたのを
必死に 隠しながら
弾いておられたようでした》
《はぁ。 いや。 失礼ですが
よく お分かりに なりましたね》
《私 目は
不自由で ございますが
耳だけは 確かでございます。
音色は 決して ごまかせません》
香琴先生には
看破されていたのですね。
その 佐智さんの遺体を
また 2人で?
(佐清)はい。
(佐清)もはや 静馬の狂気は
止められませんでした。
そして ついに 最後の殺人が
起きてしまった。
(松子)《佐清。
こんなところに いたのかい》
(松子)《たばこ?
…なんて いつ 覚えたの?》
(笑い声)
(松子)えっ?
(笑い声)
《す… 佐清。 お前》
《お前は!?》
(静馬)《俺は 青沼 静馬だよ》
(泣き声)
(菊乃)《やめて》

≪(焼ける音)
(絶叫)
(静馬)《俺の子守歌は
母親の あんたたちへの
呪いの言葉だった》
《母親の恨みを
俺が 晴らしてやる》
(静馬)《追い出せるもんなら
追い出してみな》
《その代わり あんたの殺人
全部 バラしてやる》
(松子)《佐清は? どこ?
私の佐清は どこに 行ったの?》
(静馬)《あんたの
カワイイ 佐清は 死んだよ》

(静馬)《これから 俺が
あんたの息子さ》
《よろしくな。 母さん》
(笑い声)

(静馬)《うっ!?》



(橘)静馬の遺体を 運んだのは
佐清君。 君か?
いえ。 佐清さんは そのころ
すでに 東京に戻っています。
(古館)じゃあ いったい 誰が?
あの時点で 男性の遺体を運び
逆さまにして 湖に沈めることの
できる 人物は…。
まさか?
(松子)《猿蔵。
こいつは 偽者だった》
(松子)《佐清のふりをして
あんたの大事な 珠世と
結婚しようとしたんだ》
《警察は きっと 珠世を疑う。
いいのかい? それで》
(松子)《だったら
この遺体を 始末しておいで》
(橘)おい。 猿蔵を連れてこい。
(多田)はい。
(橘)おっ。 猿。
(珠世)猿蔵。
(古館)では 松子さんが
猿蔵に
遺体を 逆さまに捨てるよう
命じたのですか?
(松子)そこまでは
申しておりません。
(橘)じゃあ あの形は 偶然か?
はっ? 何が ヨキケスだ。
違いますよね? 猿蔵さん。
彼は 珠世さんに
疑いが 掛からないよう
最後の呪いを 完成させようと
したんです。
(古館)猿蔵が?
彼は 愚かでは ありません。
金づちを 草むらに捨てたのも
いざというとき
自分が
罪を かぶるためだったんです。
猿蔵。
佐清。
どうして また 戻ってきたの?
そのまま 東京にいれば
よかったじゃない。
あなたを 守るためですよ。
松子さん。
彼は 東京に戻り 静馬が
死んだことを 知ったのでしょう。
間違いなく いずれ
松子さんの犯罪は 露呈する。
ならば 自分が 罪をかぶり
自殺すれば 全て終わる。
佐清さん。 そう 思ったのでは
ないですか?
(佐清)はい。
(松子)あなたが そのように
無事な姿で 帰ってくると
知ってたなら 母さん
あんな バカなこと
するんじゃなかった。
佐兵衛さんが 意図していたか
どうかは 分かりませんが
あの遺言状で 結果的に
松子さん 竹子さん 梅子さんが
苦しむこととなった。
30年前 自分が愛した人を
苦しめた 3人への復讐が
皮肉な形で
完遂されてしまったんです。
署長さん。 佐清は
刑に問われるのでしょうか?
やむを得んでしょう。
いかなる理由が あろうとも
事後共犯の罪は
免れない。
ただ 情状酌量の余地は
あると 思います。
そう。 珠世さん。
佐清が 牢から出てくるまで
待っててくれるわね?
佐清さんが 望んでくださるなら
私は お待ちします。
10年でも。 20年でも。
(佐清)珠世さん。
(佐清)ありがとう。

これで 安心した。


佐清。 これからは あなたが
犬神家を 支えていくのですよ。
母さん。
珠世さんと 手を取り合って。
今までのような
呪われた 一族ではなく
人々に 愛されるような。
きっと お前たちな…。
しまった!?
(佐清)母さん!
(橘)どうしたんだ!?
この たばこには
毒が入っていた。
若林さんが
死んだものと 同じだ。
(橘)医者だ! 医者 呼べ!
(佐清)母さん。
(佐清)母さん。 母さん!


(弥助)宿賃は 古館先生に
ご請求させていただきますので。
(美代)お風呂代は
引いておきましたから。
結局 お風呂
1回も 入んなかったし。
いやぁ。 参ったなぁ。
じゃあ 失礼します。
≪(美代)また 来てくださいね。
名探偵 金田一 耕助さん。

 

 

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ドラマ「犬神家の一族2018」ネタバレ感想とあらすじまとめ

 

不朽の名作、ドラマ『犬神家の一族2018』がスペシャルドラマとして帰ってきます。

そんな、ドラマ『犬神家の一族2018』のあらすじやネタバレを掲載していますので、ぜひご覧くださいね。

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