2019年4月11日金曜21時より日本テレビ系列金曜ロードSHOW!でジブリアニメ映画『風立ちぬ』が地上波で初放送されます。
映画としては2013年7月20日に公開され、地上波では2015年2月20日以来の4年ぶりの放送となります。
こちらの記事ではジブリアニメ映画『風立ちぬ』のネタバレや感想とあらすじを紹介していきます!
ジブリアニメ映画「風立ちぬ」あらすじと感想やネタバレ
ジブリアニメ映画「風立ちぬ」のあらすじ
幼いころから美しい飛行機を作ることに憧れていた二郎(庵野秀明)は、イタリアのジャンニ・カプローニ(野村萬斎)のような飛行機の設計士を目指して東京の大学に進学。そして関東大震災が起こった日、美しい少女・菜穂子(瀧本美織)と運命的な出会いを果たした。その後大学を卒業した二郎は、日本が戦争に向かって突き進む中、飛行機の設計をするために三菱に入社。上司の黒川(西村雅彦)や課長の服部(國村隼)から一目置かれる存在に成長した二郎は、親友の本庄(西島秀俊)と共にドイツに研修に行くことに。
ドイツで最先端の技術に触れた二郎は、帰国後、戦闘機の設計主任に任命された。しかし初めての試験飛行で、二郎が作った戦闘機は大破。しばらく軽井沢のホテルで静養することになった二郎が出会ったのは、絵を描くのが趣味の美しい女性・菜穂子。彼女は、震災の日に二郎が助けた少女だった。震災以降、二郎にほのかな恋心を抱き続けていた菜穂子は再会を喜ぶが、会食の約束をしていた夜に突然発熱。菜穂子は結核を患っていた。
二郎と菜穂子はいつしか恋に落ち、2人は菜穂子の父・里見(風間杜夫)の許しを得て結婚の約束を取り付けた。そして二郎は工場で再び戦闘機の設計に没頭することになるが、そこに里見から菜穂子が体調を崩したという連絡が入る…!
ジブリアニメ映画「風立ちぬ」の感想
1番好きなシーン #風立ちぬ pic.twitter.com/ZQiw1IdM5x
— SELF (@macchamontblanc) 2019年4月12日
風立ちぬ、好きすぎる。#風立ちぬ pic.twitter.com/JTNZqJdrL9
— こたつでぬくぬく (@anon_180217) 2019年4月12日
『風立ちぬ』のモブシーンはCGではなく、全て手描きの作画だ(あまりにも作業量が膨大すぎて、わずか3秒のカットを描くのに1年3カ月もかかったらしい)。動画チェッカーの舘野仁美さん曰く、「完成した映像を見て涙が出そうになった。これ全部手で描いたのかって…。本当にすごい作画です」 #風立ちぬ pic.twitter.com/KOa7wY7Onz
— タイプ・あ~る (@hitasuraeiga) 2019年4月12日
#風立ちぬ
このシーンが最高#結婚式
「女には女の…」 pic.twitter.com/PdRBScyO1X— mark69 (@luvanroma) 2019年4月12日
この海軍の方々の言ってることを聞き取ってくれる方いないだろうか……. #風立ちぬ #金曜ロードショー #ntv pic.twitter.com/VFyBe91CN4
— 小栗(元Guriiii) (@NTVandDzikkyo) 2019年4月12日
「美しいところだけ、好きな人に見てもらったのね」っていうセリフにこの恋のすべてと菜穂子の人生の覚悟がある。すべての病気がこの世からなくなればいいのに。 #風立ちぬ pic.twitter.com/2ceiRnWU1S
— ひとわ@ゆうたの集会 (@hitowa_10) 2019年4月12日
「1機も戻ってきませんでした。」
零戦はすごかった。そして乗組員も頑張った。戦争というのは残酷。絶対におこしてはならない。#風立ちぬ pic.twitter.com/gIVwyDMYuS— みるドリー (@mirukenmaiku) 2019年4月12日
撃ち落された飛行機の群れ、戦死者たちの列。ロアルド・ダールの『彼らは年をとらない』を意識してしまう。「お前はずっとそうしてひとりで飛んでいろって言われた気がしたがね」と答える『#紅の豚』のポルコ。『#風立ちぬ』の二郎が「一機も戻ってきませんでした」と見上げた空にも重なる…。 pic.twitter.com/Kp6xlN66tx
— 染⭕️ (@osome03) 2019年4月12日
この菜穂子さんの「来て…」はジブリ史上最も踏み込んだラブシーンだよな…#風立ちぬ pic.twitter.com/s8H0wU9Q26
— 日並 (@MMmm_selfish) 2019年4月12日
「いざ、夫婦の契り、とこしなえ」
「綺麗だよ」婚姻届にサインする事だけが、結婚じゃなんだよね。#風立ちぬ pic.twitter.com/S8RhDVxRiR
— luckey_bird (@luckey_bird) 2019年4月12日
銀魂でこんなパロあったよね。#風立ちぬ #アレ勃ちぬ pic.twitter.com/lvMpzYVsoi
— 鈴波(すずなみ) (@ganban_vegeta) 2019年4月12日
菜穂子さん😭ジブリの女性はみんな美しさと強さを持っていてとても好感が持てる😍 #風立ちぬ pic.twitter.com/gJF61K7ff6
— TYK餡派 (@trx555) 2019年4月12日
ジブリアニメ映画「風立ちぬ」のネタバレ
やぁ
これです
。
(
二郎
)
拝借してよろしいですか?
英語ですよ
。
兄の辞書を借ります
。
よし
やってみたまえ
。
はい
。
やめたまえ
。
(
高山
)
てめぇ
何をしやがる!
君
行きなさい
。
二郎
ガベリヤロ
ガメガネエ!
下級生をいじめるな
。
ンニャロ!
ザイン
ガリベヤロ!
オンノォ!
(
二郎の母
)
まぁ
勇ましい姿ですね
。
うっかりして転びました
。
ケンカはなりませんよ
。
はい
。
フフ…
いつものところに
おやつがあります
。
はい!
(
加代
)
あっ
ニイ兄様だ!
(
お清
)
おかえりなさいませ
。
(
加代
)
ニイ兄様
笹取りに行きましょう!
ニイ兄様!
笹取り
行きましょう
。
笹取りに行くと約束しました!
お勉強
。
お勉強じゃ
ない!
英語の雑誌です
。
変な
おヒゲ
。
イタリアの有名な設計家です
。
カプローニという方です
。
伯爵だそうです
。
あっ
ニイ兄様
すりむいてる!
うるさいなぁ
。
赤チンを塗りましょ
塗って差し上げます
。
静かにしてください
。
(
加代
)
ニイ兄様
何をなさってる?
加代は来てはダメです
。
メガネしてませぬ
。
星を見てるのです
。
遠くのものを見ると
目が良くなるのです
。
フン
。
母様に叱られますよ
。
あっ
流れ星!
ほら
また!
きれいですねぇ
ほら
あのように
。
あっ
また…
あそこにも
。
(カプローニ)
Ehi
!
Mah tu chi saresti
?
日本の少年です
。
Un ragazzo giapponese
?
Come mai ti trovi qua
?
夢です
僕の夢だと思います
。
Un sogno
?
Fermo li. Non muoverti
!
ここは私の夢の中のはずだが
。
僕の夢でもあります
。
君の夢?
日本の少年よ
我々の夢と夢が
くっついたというのか
。
不思議です
あなたはカプローニ伯爵ですね
。
お会いできて嬉しいです
。
フフフ…
面白い
まさに夢に違いない
この世は夢
。
わが王国にようこそ
。
光栄です
。
見たまえ
。
あの半分も戻って来まい
敵の街を焼きに行くのだ
。
だが戦争は
じき終わる
。
乗りたまえ
日本の少年
。
これは私の夢だ
。
戦争が終わったら
こいつをつくるのだ
。
どうかね
豪華だろうが
。
飛ぶぞ
。
爆弾の代わりに
お客を乗せるのだ
。
こんな所に穴などないのだが
。
夢は便利だ
どこへでも行ける
。
来たまえ
。
桁の上を歩けばよいのだ
。
見たまえ
。
うわぁ
。
どうかね
美しかろう
。
はい
壮麗です
。
100人の客を乗せて
大西洋を横断するのだ
。
カプローニさん
質問があります
。
近眼でも飛行機の設計は
できますか?
僕は近眼で
飛行機の操縦ができません
。
いいかね
日本の少年よ
。
私は飛行機の操縦はしない
いや
できない!
ハハハハ…
。
パイロットに向いてる人間は
他に
たくさんいる
。
私は飛行機をつくる人間だ
。
設計家だ!
はい!
いいかね
日本の少年よ
。
飛行機は戦争の道具でも
商売の手だてでもないのだ
。
飛行機は美しい夢だ
設計家は夢に形を与えるのだ
。
はい!
さらば
また会おう!
二郎さん
お床でおやすみなさい
。
夢を見ていたのね
。
大きな声で
お返事をしていたので
びっくりしました
。
母さん
僕は飛行機の設計家になります
。
そう
素敵な夢ですね
。
飛行機は美しい夢だと
その方は言いました
。
僕は美しい飛行機をつくりたい
。
そこの人
ここへお座りなさい
。
ちょっと失敬…
さぁ
。
(
菜穂子
)
うわぁ
気持ちがいいわ!
(
お絹
)
お嬢様
帽子が飛びますよ
。
平気よ
。
うっ!
危ない!
お嬢様!
大丈夫ですか?
セーフ!
ナイスプレー!
ありがとう
。
“Le vent se l外ve,”
“il faut tenter de vivre.”
“Le vent se l外ve,
il faut tenter de vivre.”
「
風が立つ
生きようと
試みなければならない
」。
地震だ!
(
赤ん坊の泣き声
)
(
汽笛
)
機関車が爆発するぞ!
(
汽笛
)
どうしました?
足が…
。
見せなさい
。
あ…
イタタ…
。
お絹
しっかり!
骨が折れている
これでは歩けない
。
お嬢様
汽車が爆発します
。
早く逃げ…
あっ!
バカなことを
。
機関車は爆発なんかしない
。
トランクを
。
うっ…
。
力を抜いて
さぁ…
。
ああっ!
うっ!
歩くのは無理だ
家はどこ?
上野です
。
そこまで送ろう
。
ハッ!
おおお…
。
火事…
。
行こう
。
君たちの荷物は?
いいんです
。
ハァ
ハァ
ハァ…
。
うっ!
あっ…
。
すみません
すみません…
。
すまん
痛かった?
しっかり
。
ハッ!
行こう
。
ああっ!
僕のシャツだけど
母が縫ってくれた新品です
。
口をお開けなさい
。
井戸が枯れてしまった
。
あなたは?
はい!
広小路のほうは火が来ていません
。
僕は本郷の学校へ行きます
あなた方は?
私
家の者を呼んで来ます
。
僕も一緒に行きましょう
。
お絹さん
これをお願いします
。
はい
。
きっと戻ります
心配しないで
。
はい
。
トランクをお願いしますね
。
はい!
あっ
。
うわ!
ハッハ!
ハァ
ハァ
ハァ…
。
ありがとうございました
。
では
よろしく
。
あの
お名前だけでも…
。
いい男じゃねえか
なぁ
お絹坊
。
(
本庄
)
二郎じゃねえか
ひどい日に戻ったな
。
航空研究所は?
分からん
深川は火の海だ
。
持ち出せるだけ
持ち出したんだが…
。
タバコあるか?
(
風の音
)
デカいな
ドアか何かだ
火が移るぞ
。
東京壊滅だ
。
本当につくってしまったんだから
カプローニさんの夢は壮大だ
。
撮るな
(
風の音
)
風が変わった
火がこっちに来るぞ!
まだ風は吹いているか
日本の少年よ
。
はい!
大風が吹いています!
では生きねばならん!
“Le vent se l外ve,
il faut tenter de vivre.”
(
鐘の音
)
二郎
行くか
。
うん
。
(
本庄
)
旧式だ
何もかも
ちっとも変わらん
。
道は少し広くなったよ
。
飛んでるものは同じさ
。
(
お君
)
いらっしゃい!
二郎
またサバか
。
サバは
うまいよ
。
マンネリズムだ
大学の講義と同じだ
。
(
片山
)
君ちゃん
卵つけて
。
(
お君
)
へい!
列強はジュラルミンの時代に
なってるんだ
。
たまには肉豆腐でも食え
。
俺たちは10年以上
遅れてるぞ
。
何だ?
美しいだろ
素晴らしい曲線だと思わないか?
お前
骨を見るために
サバを食ってるのか
。
いいから
早く食え
コーヒーに行くぞ
。
(
片山
)
二郎さん
随分熱心ですね
。
(
本庄
)
サバの骨さ
。
堀越さんは
お戻りですか?
二郎
。
本庄!
われ発見せりだ!
サバの骨と同じ翼断面が
NACAの規格にあるぞ
。
アメリカ人もサバを食うのかな
。
(
本庄
)
二郎
お客だよ
。
はい
。
先ほど
若い娘さんが
これを堀越さんにと
。
お留守だったので
お預かりしました
。
それは
ありがとうございます
。
二郎さん
リーベのプレゼントですか?
タバコあるか?
1本くれ
。
二郎さん!
ほっとけ
。
おかえりなさいませ
。
ただいま
。
お客様をお部屋にお通ししました
女の方ですよ
。
え…
あっ
はい
。
ニイ兄のバカ!
加代…
ごめん
。
すっかり忘れてた
。
もう!
母さんは?
おじさんのとこ
。
泊まるの?
ひと晩だけ
。
加代
大きくなったなぁ
きれいになったねぇ
。
ニイ兄は薄情者です
全然
帰って来ないんだから!
ああ
こんなに遅くなっちゃった
。
送るよ
僕が謝ってあげる
。
一銭蒸気で行こう
。
その人
きっとニイ兄が好きなのね
。
まさか
2年も前のことだ
。
その後
お家を訪ねてみなかったの?
行ったよ
火が収まってから一度だけ
。
その路地で火が止まったらしい
。
そう
。
ほら
そこだよ
。
寒くないかい?
平気
。
こんなに東京が復興してると
思わなかったわ
。
(
加代
)
ニイ兄の部屋に
私も住んじゃダメ?
1人じゃ
お父さんが
東京に出してくれないの
。
あそこは…
その頃には
僕は多分
名古屋だな
。
飛行機会社?
うん
。
いいなぁ
男は…
。
私
大学へ行って
医学を学びたいの
。
お医者さんか
加代ならいいかもしれないね
。
ねっ
そうでしょ?
正月に帰るから
父さんに話してあげるよ
。
嬉しい
お願いね
。
(
汽笛
)
(
汽笛
)
二郎!
よぉ
。
やぁ
。
来たな
。
うん
来た
。
いよいよだ
。
うん
いよいよだ
。
そりゃあ
仕事を探しに
町へ出て来る連中だな
。
たくさん歩いていた
。
野宿しながら来るんだよ
。
ちょっと!
危ねぇ!
(
運転手
)
まただ
今度は亀八銀行ですよ
。
金
返せ!
開けろ!
取り付け?
そうだな
。
(
運転手
)
噂はあったんですがね
。
(
本庄
)
世の中
不景気だ
俺たちの行く会社も不景気だぞ
。
(
黒川
)
この忙しい時に…
。
君は今日を何日だと思ってるのだ
。
4月中なら
いつでもいいとのことでした
。
だとしても
3月には顔を出すものだ
。
はい
。
追い込みだ
すぐ本番に入ってもらう
。
はい
。
主翼の取り付け金物だ
データは
そろえてある
。
はい
。
すぐ作図してもらう
。
工作部が手が空きそうだ
。
はい
。
(
黒川
)
ここだ!
君
ちょっと待ってくれたまえ
。
こっちへ
。
ここが君の机だ
。
わざわざ輸入してみたが
誰も使わん
。
使ってみたまえ
。
はい
。
データはこれ
帽子はそこ
。
はい
。
諸君!
新人を紹介する!
噂の英才が
わが隼班に来た
。
挨拶
。
堀越です
よろしくお願いします
。
仕事にかかりたまえ
。
はい
。
(
本庄
)
二郎
おい
。
めしだ
行こうぜ
。
ああ
。
(
本庄
)
組立工場か
。
うん
ちょっと覗いてみたいんだ
。
確かに変だな
。
今日来たばかりの新人に
取り付け金具は乱暴だ
。
2つね
。
(
本庄
)
こんにちは
ちょっと
お願いがあるのですが
。
あぁ!
随分
出来てますね
。
申し訳ありませんね
休み時間なのに
。
(
工長
)
いやぁ
設計の若い人が
来てくれるのは嬉しいですよ
。
本庄
取り付け金具は
もう出来てるよ
。
やっぱりな
新米に
やらせるはずがないさ
。
お前のと
どっちが出来がいい?
黒川さんらしい新人しごきですね
。
本庄
ちょっと来て
ここを見てくれ
。
意見を聞かせてくれ
。
どう思う?
堅実な設計だな
。
これではダメだよ
僕の考えたものと同じだもの
。
そりゃマズいや
。
工長
休み時間
終わりました
。
静かにしてろ
。
面白い!
飛行機は面白いなぁ
。
面白いが遅刻だぞ!
服部です
。
設計課の服部課長だ
。
これが初仕事かね
。
隼の取り付け金具です
。
これは違うぞ
。
えっ
説明したまえ
。
はい
。
金具の剛性を高めるために
スチールの板バネを使います
。
ワイヤの伸縮で圧力を吸収し
ワイヤは支柱の中を通して
胴体骨格に固定します
。
それでは主翼の骨組みそのものを
改変せねばならぬ
。
そうなんです
それにまだ計算もしていません
。
時間の無駄だ!
君に出した仕事は
一体どうなったんだ!
出来ています
。
どうかね?
きれいな線を引くな
。
完璧です
。
出来たものは
すぐに出すこと
。
はい
。
おい
俺は帰るぜ
。
僕も帰るよ
。
いいのか?
黒川さんの宿題は
。
もう終わる
。
牛がいる
。
新品を飛行場に運ぶんだよ
。
時速3キロで2日がかりさ
恐るべき後進性だよ
。
でも
牛は好きだ
。
来るぞ!
来るぞ!
計測
よい!
ガッ!
あっ!
しまった!
とったか
13
.
3秒です
時速270キロ
。
遅い!
あと15キロは出るはずだ
。
高度が低過ぎた
エンジンも本調子が出てない
。
(
服部
)
おい
黒川君
。
(
黒川
)
はい
。
(
服部
)
陸軍の方々が
来てくださってる
。
はい
。
やぁ
おめでとう
。
勇猛果敢
。
さすがは三菱
まとめ方がうまい
。
ハハハハ…
。
動力降下です
時速400キロに挑みます!
落下傘!
自動車だ!
黒川さん
機体の回収は天候の
回復を待つことになりました
。
パイロットは?
無事です
。
そうか…
。
黒川さん
戻りましょう
戻って2号機をつくりましょう
。
君は空中分解の原因が
取り付け金具だと思うか?
いいえ
問題は
もっと深く
広く
遠くにあると思います
。
今日
自分は
深い感銘を受けました
。
目の前に果てしない道が
開けたような気がします
。
隼に2号機はない
。
陸軍は
すでに戦闘機は
他の社にすると内定している
。
今日は
それをひっくり返す
一回きりのチャンスだったのだ
。
わが社はドイツのユンカース社の
爆撃機をつくることになっている
。
小型機は当分あるまい
。
ドイツを見に行くチャンスだ
君を推薦しておいた
。
(
鐘の音
)
まだいいかい?
(
店主
)
おや
おかえりなさい
今夜は
だいぶ遅いね
。
シベリヤを2つおくれ
。
はいよ
。
へい
お待ち
。
あの子たちは?
親の帰りが遅くてねぇ
。
いつも
ああして待ってるんだよ
。
私も店を閉めにくくてね
。
そうか…
ありがとう
。
まいど
どうも
。
君たち
ひもじくない?
これを食べなさい
。
そこの店で買ったばかりの
シベリヤです
。
さぁ
取りなさい
。
行こう!
あ…
。
いるか?
隼
残念だったな
開発中止だって?
ん…
。
シベリヤか
妙なものを食うな
。
そりゃ偽善だ
。
お前
その娘がニッコリして
礼でも言ってくれると
思ったのか?
違う!
いや…
そうかもしれない
。
腹をへらしてる子供なら
この横町だけでも何十人もいる
。
隼の取り付け金具1個の金で
その娘の家なら
ひと月は暮らせるよ
。
この国は
どうして
こう貧乏なんだろう
。
二郎
今回の技術導入で
ユンカース社に
どれだけ金を払うか知ってるか?
日本中の子供に
天丼とシベリヤを
毎日
食わせても
お釣りが来る金額だ
。
それでも俺は
与えられたチャンスを
無駄にしないつもりだ
。
本庄も行けるのか
。
今日
決まった
。
そうか
よかったな
。
貧乏な国が飛行機を持ちたがる
。
それで俺たちは飛行機をつくれる
。
矛盾だ
。
明日
東京へ行って来る
嫁をもらうんだ
。
嫁?
本腰を据えて仕事をするために
所帯を持つ
。
これも矛盾だ
。
じゃあな
。
(
汽笛
)
(
本庄
)
ドイツ人はケチだ
はるばる訪ねて来たのに
工場は立ち入り禁止だとよ
。
牛がいないね
。
(
本庄
)
工場の隣が飛行場だからな
。
広いなぁ
。
G38じゃないか
こんなものを買うの?
(
本庄
)
爆撃機型を
日本でつくるんだ
極秘だぞ
。
陸軍は
一体どこと
戦争をするつもりなんだろう
。
(
本庄
)
アメリカだろう
できやすまいが
。
それにしても
よく出来てるぜ
。
見事だな
。
翼に展望室がある
爆撃機にするのは惜しいよ
。
(
本庄
)
なぁに
金属工作の技術を学ぶ
チャンスだと思えばいいんだ
。
何だよ
中を見せない気かよ
。
美しい…
。
Japaner, komm nicht n外her
!
Euer Platz ist dort dr外ben.
Geh zur外ck
!
(
本庄
)
やめろ
その男に手を触れるな!
これがドイツ人の
客に対する態度か!
日本人は
すぐ真似をする
技術は
わがドイツの財産だ
。
偉そうに言うな
こんな旧式機
日本にも
いっぱいあらぁ!
本庄
もういいよ
。
Wir sind wegen
…
…技術提携のために
この工場を訪れた
。
我々が
この格納庫に入ったのは
契約に基づく正当な行為である
。
諸君の上司は
我々に
この機体へ
近づくなという指示をしていない
。
諸君が自己の任務に
忠実であることは疑わない
。
しかし
対等の契約の相手である
我々を侮辱することは許されない
。
我々は
日本人をウロウロ
させるなと命令されている
。
(
男
)
≪
Moment mal
!≫
ユンカース博士だ
。
うん
立派だな
。
博士の許可が出た
この中を案内する
。
まさか乗れるとは思わなかったな
。
思ったより振動が多いね
。
先輩たちが
はしゃいでるぜ
。
(
社員
)
君たち
軍の方々に替わりたまえ
。
はい
。
今
替わります
。
いやぁ
見事なものじゃないか
。
おい
翼の中の通路だ
。
これはすごい
。
まるで工場の中だ
。
Wer ist da
!
Hier ist der Zutritt verboten
!
グーテンターク
ユンカース博士に
見学の許可は取ってあります
。
あなたの仕事場を見せてください
。
ここは機関士の持ち場だ
。
素晴らしい飛行機ですね
。
Das ist unser Stolz.
日本人
ここから先へは行くな
Da besteht Lebensgefahr.
分かったよ
兄弟
。
すごいな
。
うん
見事だ
。
(
本庄
)
ドイツ工業技術の結晶だ
。
ユンカース博士は立派だが
ユンカース社の人間はケチだ
。
二郎
タバコあるか?
二郎!
ん?
タバコ
。
ない…
切れた
。
外は寒そうだけど
この部屋は
あったかいな
。
こっちは
みんな
暖炉かと思っていたよ
。
これもユンカース製かなぁ
。
今日見た飛行機と似ていると
思わないか?
美しいよ
。
分かった分かった
俺たちには
技術の基礎がないっていうんだろ
。
俺は
コタツと銭湯でいいんだ
。
飛行機とコタツを
くっつけようというんだ
。
まったく
今日もらった
このデータは美しい
。
見事に
あの巨人機についてしか
書いてない
。
「
技術は
わがドイツの財産である
」。
本庄
コタツと飛行機は
つながるかもしれないよ
。
木でも金属に
対抗できるかもしれない
。
それでは間に合わない
俺たちは20年は遅れてるんだ
。
歩こう
。
脳みそが煮えちまいそうだ
。
(
本庄
)
俺たちは20年先のカメを
追いかけるアキレスだ
。
20年の差を5年で追いつくが
カメは5年先にいる
。
俺たちは5年を1年で追いつく
。
それでは
ずっと追いかけることになるよ
。
今は
そうするしかないさ
いつか追いつき
追い越してやる
。
小さくてもカメになる道は
ないのかなぁ
。
『
冬の旅
』
どうした?
蓄音機が鳴っている
。
『
冬の旅
』
か
。
俺たちにピッタリの歌だな
。
Dieser Japaner
!
≪
Da dr外ben
!≫
Geh zur外ch nach Japan
!
何だろう
。
今の男は格納庫にいたヤツだ
。
(
汽笛
)
(
汽笛
)
(
本庄の声
)
二郎
。
おい
出たぞ
風呂に入れ
。
寝ちまったのか
。
日本の飛行機を1人で
背負ってるような顔しやがって
。
(
ノック
)
本社から電信が入った
。
どうぞ
。
ここでいい
。
数名を残して
帰国することになった
。
本庄君は残留する
。
二郎君は西回りで帰国する
。
(
本庄
)
西回り?
(
社員
)
世界を見て来いということだ
。
(
本庄
)
一人旅ですか
。
(
足音
)
カプローニさん!
まだ風は吹いているかね?
はい
吹いています
。
では
私の引退飛行に招待しよう
来たまえ
。
引退なさるのですか?
思い切り跳べ
。
(
汽笛
)
跳べ!
えいっ!
アハハハ…
。
早く乗りたまえ
飛ぶぞ!
下だ!
腹の下に
出入り口がある!
急げ!
はい!
ちょっと通してくれ
。
ここへ!
飛べ!
行け!
行け!
みんな
職工の家族や親戚たちだ
まぁ
村じゅうだな
。
ただし当局には秘密だ
何しろ納品前の爆撃機だからな
。
どうかね?
壮大です
。
古代ローマの建築物のようです
。
まぁ
当局のハッタリ好きに
つけ込んだんだ
。
こんなものは戦争には使えんよ
。
私たちの国は貧乏です
。
技術も未熟で
とても
これだけのものはつくれません
。
設計で大切なのはセンスだ
。
センスは時代を先駆ける
技術は
その後について来るんだ
。
家内だ
。
あ…
。
貧乏なら
わが国も同じだ
子だくさんだしな
。
おい!
あんまり騒ぐと
底が抜けるぞ!
来たまえ
。
頭に気をつけたまえ
いくら夢の中でも首が飛ぶぞ
。
君は
ピラミッドのある世界と
ピラミッドのない世界と
どちらが好きかね?
ピラミッドですか
。
空を飛びたいという人類の夢は
呪われた夢でもある
。
飛行機は
殺りくと破壊の道具になる
宿命を背負っているのだ
。
はい
。
それでも
私は
ピラミッドのある世界を選んだ
。
君は
どちらを選ぶね?
僕は美しい飛行機を
つくりたいと思っています
。
あれかね?
うん
いい感じだ
。
いいえ
まだまだです
。
エンジンもコックピットすら
形になっていません
。
ブラァボー!
美しい夢だ
。
私は
この飛行を最後に引退する
。
創造的人生の持ち時間は10年だ
。
芸術家も設計家も同じだ
。
君の10年を
力を尽くして生きなさい
。
二郎
ちょっとフライアに来い
。
これから打ち合わせが…
。
延ばせ
。
過大な要求ですね
。
いつも
そんなものだ
。
(
服部
)
二郎は入って何年になる?
二郎
。
は?
入社して何年?
5年です
。
それだけあればいいだろう
そいつの設計チーフをやりたまえ
。
海軍
昭和7年試作
艦上戦闘機だ
。
大抜てきだぞ
。
おい
二郎
。
(
服部
)
どうかな?
やらせていただきます
。
よし
。
スタッフに
本庄をもらえませんか?
やめとけ
同期はライバルだ
組むと友情を失うぞ
。
(
服部
)
ゆっくりして行きなさい
。
君ちゃん
お勘定
。
本庄にも
やってもらうことが
あるんだ
。
これが国産エンジンだ!
これが航空母艦だ…
。
着替えを用意しました!
あ…
ありがとうございます
。
どうも
お世話さまです
。
いや
似合いますな
。
うっ!
(
号笛
)
(
下士官
)
発艦やめ!
(
号笛
)
よし!
やった!
やったぞ!
飛んだ!
お父様!
(
風の音
)
あっ!
うわっ!
うっ!
ブラァボー!
ナイスキャッチ!
(
里見
)
いや
失敬
失敬
君
ケガは?
いいえ
どうぞ
。
ありがとうございます
借り物をなくすところでした
。
では
これで
。
お父様
私
失礼なこと言っちゃった
。
なぁに
いい青年だ
。
同じホテルだから
お礼を言う機会はあるさ
。
(
風で激しく閉まる音
)
(
遠雷
)
どうしたんだい?
ううん
ほら
パラソルをつかまえてくれた人
。
ああ…
連れは
いないのかな
。
あの…
僕
戻ります
。
行かないでください
。
今
泉にお礼を申しましたの
。
あなたが
ここへ来てくださるように
お願いしていたんです
。
あなたは
少しも
お変わりになっていませんね
。
あの時のまま
。
震災の時
本当にありがとうございました
。
ずっと
お会いして
お礼を言いたかったの
。
あっ
あの時の…
。
里見菜穂子と申します
。
堀越二郎です
。
大丈夫ですか?
はい
。
あなたの居所が分かったのは
お嫁に行く2日前だったんです
。
お絹
泣いて喜んでいました
。
二郎さんは
お絹と私の王子様だったの
。
王子様?
そう
白馬に乗った王子様に
見えました
。
この傘
漏りますね
。
平気です
。
お絹に教えてあげなきゃ
。
あの人
この前
2人目の
赤ちゃんを産んだんですよ
。
とてもかわいい赤ちゃん
。
絵が濡れちゃいましたね
。
ええ…
このまま
記念に取っておきます
。
ほら
空が明るくなりました
。
わぁ
。
あっ
。
乾いています
。
ほら
ご覧になって
。
虹なんか
すっかり忘れていました
。
生きているって素敵ですね
。
行きましょう
きっと父が大心配しています
。
父です
。
お父様!
いらしてくださいね
父を紹介します
。
はい
。
ずぶ濡れじゃないか
。
平気です
この方に
助けていただきましたの
。
堀越さんです
。
堀越です
。
里見です
。
娘が
また
ご厄介をおかけしました
。
(カストルプ)
ココ
イイデスカ?
どうぞ
。
(
マッチを擦る音
)
ドイツノタバコ
コレ
サイゴ
カナシイ
。
分かります
私も
同じ体験を
しました
。
アナタ
ドイツ
イキマシタネ
デッソウ
デショウ?
あなたは
シャーロック
・
ホームズですか?
アナタ
エンジニア
。
イツモ
ドイツノ
ヒコーキノ
ザッシ
ミテマス
。
ニホンノ
エンジニア
ミンナ
デッソウ
イク
。
ハハハ…
。
ハハハ…
。
完璧です
。
ユンカース博士ハ
オワレマス
。
おわれる?
セイフト
ケンカ
シテル
ハレツスル
。
ヒットラー氏の政権とですか?
あれは
ならず者の集まりです
。
ココハ
イイトコロ
デスネ
。
モスキート
イナイ
アツクナイ
クレソン
ウマイ
。
イヤナコト
ワスレルニ
イイ
。
いかがですか?
日本のタバコですが
。
アリガトウ
。
イイヨルデス
。
ココハ
Der Zauberberg.
「
魔の山
」
…
トーマス
・
マン?
ワスレルニ
イイトコロデス
。
チャイナト
センソウ
シテル
ワスレル
。
マンシュウコク
ツクッタ
ワスレル
。
コクサイレンメイ
ヌケタ
ワスレル
。
セカイヲ
テキニスル
ワスレル
。
ニホン
ハレツスル
。
ドイツモ
ハレツスル
。
ドイツは
また戦争をしますか?
ソウ
トメナケレバ
。
すまない
すっかり
お待たせしてしまった
。
実は菜穂子が熱を出しまして
。
今夜の会食は
キャンセルさせてください
。
はい
分かりました
お大事にと
お伝えください
。
じきに医者が来ますので
これで
。
《
「
誰が風を
見たでしょう
」
》
《
「
僕もあなたも
見やしない
」
》
《
「
けれど木の葉を
顫わせて
風は通りぬけていく
」
》
風よ
つばさをふるわせて
あなたの元へ
とどきませ
。
二郎さん…
。
菜穂子さん!
しっかり!
オォ!
おっ…
。
アハハハ…
。
あ
。
あっ!
ハッ!
フフフ…
ナイスキャッチ!
『Das gibt’s nur einmal』
Das gibt’s nur einmal
das kommt nicht wieder
das ist vielleicht
nur Tr外umerei
Das kann das Leben
nur einmal geben
vielleicht ist’s morgen
schon vorbei
Das kann das Leben
nur einmal geben
denn jeder Fr外hling hat
nur einen Mai
(
二郎と里見の拍手
)
ブラァボー
。
お嬢さん
治りましたか?
おかげさまで良くなりました
。
おめでとう
。
ここは魔の山
みんな治る
。
そうかもしれません
。
この若者
来た時
うちひしがれていた
。
いま
スッカリ
ゲンキ
。
コイ
したカラ
。
はい
。
ヒショチのコイは
すぐオワル
。
下へもどる
山のこと忘れる
。
僕は違います
。
そのお相手とは
まさか
うちの娘では…
。
はい
菜穂子さんです
。
オオ!
お嬢さんとのお付き合いを
認めてください
。
ん…
いや…
しかし…
。
≪お父様≫
そのお話
お受けしたいと思います
。
美しい…
。
その前に
お話ししなければ
ならないことがあります
。
はい
。
2年前に母を亡くしました
結核でした
。
私も同じ病にかかっています
。
僕は
あなたを愛しています
帽子を受け止めてくれた時から
。
私も
風があなたを
運んで来てくれた時から
。
僕と結婚してください
。
はい
でも必ず病気を治します
それまで待っていただけますか?
もちろん
100年だって待ちます
。
おめでとう
彼はいい青年
。
お嬢さんも立派
イイ!
コノ夏
イイ夏です
。
(
本庄
)
二郎
ここだ!
本庄!
いつ戻った?
一昨日
。
こっちは暑いぜ
。
まぁ
見てくれ
。
きれいだなぁ
。
これはいいや
。
実験機みたいなものだからな
好きにやってるんだ
。
飛ばしてみないと
何とも分からんよ
。
ああ
これは飛ぶ
。
風が立ってる
。
本庄は日本のアキレスだ
20年をひとまたぎした
。
僕のはブリキのアヒルだった
。
これ
使えないか?
僕のアヒルには
間に合わなかったんだ
。
点検孔のフタに
皿小ネジを使うんだ
。
空気抵抗が減る
。
燃料の注入孔も
片方にヒンジを
付けてやれば作業も楽だ
。
スプリングの弾性は
こんなもので十分だと思う
。
二郎
いいアイデアだ
こりゃコロンブスの卵だ
。
使ってくれ
。
ありがたいが
今は使わん
。
この図面は
もらっとく
。
二郎が次のアヒルに使ってから
俺も使わせてもらうよ
。
分かった
。
早く使わせろ
待ってるぞ
。
二郎!
いるか!
黒川さん…
二郎
。
はい
。
(
黒川
)
すぐ戻れ!
はい
じゃあ
ありがとう
。
今度
家に遊びに来い
。
うん
。
二郎
こげ!
特高が二郎を調べに来てる
。
は…?
思想犯専門の秘密警察だ
。
僕をですか?
お前は出張で
いないことにした
。
あっ!
(
黒川
)
引き揚げたと見せかけやがって
その手に乗るか
。
二郎は今日はここにいろ
仕事は運ばせる
。
説明してください
身に覚えのないことです
。
俺の友人が
何人も特高にやられてる
。
みんな
身に覚えなぞなかった
。
(
ノック
)
入れ
。
(
曽根
)
失礼します
。
これで我慢してください
。
(
久保
)
あと何か
いりますか?
置いたら
すぐ戻れ
。
(
大吉
)
二郎さん
来ました!
(
中吉
)
フランジのテストショットです
。
(
大吉
)
うわぁ…
。
いい感じですね
。
一年早く出来てればなぁ
。
(
久保
)
二郎さん
どうですか?
次はアヒルの子ではなくて
カモぐらいには
なれそうです
。
ハハハハ…
。
全金属製のカモですね
。
黒川さん
いかがです?
軽いな
ジュラルミンの
押し出し材とは贅沢なものだ
。
さぁ
みんな戻れ!
(
黒川
)
つけられては
いませんね
。
もういいぞ
。
プハ!
用心のためだ
23日
姿を隠せ
その間に上から手を回す
。
俺の家に来い
離れがある
。
一度
下宿に帰らせてください
手紙が来るんです
。
見られるとマズい手紙か?
はい
極めて困ります
。
特高は平気で私信を開けるぞ
。
婚約者の手紙です
。
それは冒涜です
近代国家にあるまじきことだ
。
アッハハハ…
君
婚約したのか!
アハハハ…
。
二郎も人間だったか
。
めでたい
。
日本が近代国家と思ってたのか
。
笑いごとではありません!
当たり前だ!
下宿にこそ
特高が張り付いている
。
恋文ぐらい
いくらでも読ませてやれ
。
海軍の次の飛行機が来る
君がやるんだ
。
会社は全力で君を守る
君が役に立つ人間である間はな
。
今は仕事に専念しろ
。
《それにしても
別れは唐突でした》
外車のクラクション外
《今は
彼が無事に
国外へ脱出したことを
祈るばかりです》
外
(
ベル
)
(
黒川夫人
)
二郎さん
お電話です
。
はい
。
こちらへ
。
ありがとうございます
。
もしもし
。
外
(
黒川
)
二郎
俺だ
君に電報が来ている
。
はい!
外
アパートの管理人が心配して
持って来てくれたんだ
。
外
2日前に届いたそうだ
。
そこで読んでください
。
外
いいのか?
はい
。
「
ナホ
コカツケツ
チ…
チ…
」。
「
ナホコ
カッケツ
チチ
」
だ
。
外
もしもし
聞いてるか?
はい
ありがとうございます
。
外
ちょっと待て
おい…
。
(
黒川夫人
)
あの…
。
東京へ
一番早く行く方法を
教えてください!
東京へでございますか?
はい
一刻も早く
行かなければなりません
。
お待ちください
。
昼のバスが
じき通ります
。
それなら
1時の急行に間に合います
。
人をやってバスを待たせましょう
。
お支度を
。
はい!
じいや
じいや
。
ハッ!
あなた!
遅れてごめんね
。
うつります
。
きれいだよ
。
大好きだ
。
二郎君が庭から…
。
フフフ…
。
(
ノック
)
はい
どうぞ
。
お父様
二郎さんが来てくださったの
。
でも
すぐ
お戻りにならないといけないの
。
今度は明るいうちに
玄関から来ます
。
お庭からのほうが嬉しい
。
じゃあ
そうしますよ
。
お気をつけて
あなた
。
菜穂子もね
。
失礼します
。
送ろう
。
(
里見
)
終列車?
じゃあ
急がんと
。
そんなに…
。
僕が付き添えればいいのですが…
。
君には仕事がある
男は仕事をしてこそのものだ
。
さっ
行きたまえ
。
お帰りになったよ
。
お前
泣いているのかい
。
お父様
私
お医者様のお薦めの
高原病院にまいります
。
だって
お前
あんな寂しい所に1人きりで…
。
私
治りたいの
二郎さんと一緒に生きたいの
。
とにかく間に合ってよかった
重役たちが
お待ちかねだ
。
(
せき払い
)
(
社主
)
で
どうかね
。
全力を尽くします
。
次は海軍さんだ
注文主だ
。
同時に発言する海軍士官たち
全力を尽くします
。
お前
聞いてないな
。
はい
。
ハハハハ…
。
で
この案は取りやめた
。
ハハハハ…
。
だいぶ遅いね
。
課長
自主的研究会だそうです
。
ほぉ
。
次は最新の航空技術を結集する案
。
これを見てくれ
。
(
曽根
)
引っ込め脚ですね
。
270ノットを出すためには
これがいる
。
270ノット!
時速500キロですか!
海軍の要求は220ノットでは?
それでは
すぐ時代遅れになるよ
。
(スタッフたち)
おぉ…
。
翼面荷重は120キロ平米
。
(スタッフたち)
おぉ!
有害な抵抗を削り
最新の技術を大胆に取り入れる
。
スプリットフラップはもちろん
翼端スラットも
。
よし
やろう!
やろう!
俺たちでやろう!
よし
つくるぞ!
ただ
ちょっと重くなるんだ
。
機関銃を載せなければ
何とかなるんだけどね
。
ハハハハ…
。
ハハハハ…
。
(
服部
)
ハハハハ…
。
それで
この案は
次の機会に譲ることにした
。
愉快だ
明快だ
。
惜しいなぁ
。
僕らのエンジンは非力だ
。
軽く丈夫な機体をつくるのが
僕らの仕事だ
。
削れるだけ削り
表面を
滑らかにして空気抵抗を減らす
。
スッカラカンの
フルメタルの
世界中どこにもない飛行機が
僕らの飛行機だ
。
はい!
はい!
質問があります!
質問です!
平山さん
どうぞ
。
工作課から
平山技師に来ていただいた
。
平山です
。
新しい鋲について
お話ししていただく
。
鋲の頭を平滑にして
同じ強度を保つことは
技術的に不可能ではありません
。
何のことだ?
沈頭鋲です
。
沈頭鋲は
すでに
世界中で試みられている
。
それを全面的に使おうと思うんだ
。
はい!
はい!
質問!
(
服部
)
いやぁ
面白かったな
。
(
黒川
)
感動しました
。
里見さん
郵便です
。
はい
ありがとう
。
チーフ
電話です
。
後にしてもらえないか
。
急用だそうです
。
もしもし…
あっ
ご無沙汰しております
。
はい…
はい
はい
。
ハッ!
二郎さん
二郎さん…
。
よかった
見つけられなかったら
どうしようかと思った
。
もう大丈夫だよ
。
歩ける?
うん
。
行こう
。
(
汽笛
)
私
ひと目会えたら
すぐ帰るつもりだったの
。
帰らないで
。
ここで一緒に暮らそう
。
まぁ
かわいいお連れさん
。
菜穂子と申します
。
あなたが菜穂子さんね
。
(
黒川
)
二郎か?
お願いがあって伺いました
。
あなた
よろしいじゃありませんか
。
離れを貸すのは構わん
しかし結婚もしてない男女をだ
泊めるような
ふしだらなことは
認められん!
今すぐ結婚します
。
黒川さん
奥様
仲人をお願いします
。
今すぐ!
今夜か
あなた
素敵じゃありませんか
。
恋しさに山を抜け出して
来るなんて
けなげだわ
。
父も分かってくれました
病院へも連絡しました
。
お願いします
。
そうと決まれば
女には女の支度があります
。
菜穂子さん
いらっしゃい
。
平気
うちの人は
いつもああなの
。
彼女の体を思うなら
できるだけ
早く山に戻さなければならないぞ
。
私が飛行機をやめて
付き添わなければなりません
。
それはできません
。
君のは愛情ではなく
エゴイズムじゃないのか
。
私たちには時間がありません
覚悟しています
。
そうか…
。
分かった
盛大に祝おう!
来た
来た
。
来たぞ!
申す
七珍万宝
投げ捨てて
身ひとつにて山をくだりし
見目麗しき乙女なり
いかに
。
申す
雨露しのぐ屋根もなく
鈍感愚物の男なり
。
そ…
それでもよければ
お入りください
。
いざ
夫婦の契り
とこしなえ
。
きれいだよ
。
黒川様
奥様
。
身ひとつの私どもへの
温かい思いやり
お礼の言葉もございません
。
このご恩は生涯忘れません…
。
いいのよ
素敵な人が
二郎さんを好いてくれて
私たち
嬉しいの
ねぇ
あなた
。
うんうん…
けなげだ
いやぁ
めでたい
おめでとう
。
疲れたろう
。
ずっと夢の中にいるみたい
何だか揺れてるの
。
安心して
ゆっくりおやすみ
。
来て
。
だけど
お前…
。
来て
。
(
足音
)
ニイ兄は
いつも
こんなに遅いのですか?
加代が来るの
すっかり忘れてた
。
もう
薄情者
。
お医者さんになったんだね
おめでとう
。
ニイ兄様には
ご結婚おめでとうございます
。
黒川様へのお礼かたがた
両親に代わって伺いました
。
黒川さんたちは?
おやすみになりました
。
菜穂子に会ったの?
はい
。
ニイ兄
菜穂子さんを
どうする気なの?
離れに独りぼっちで
寝かせておいて
。
ニイ兄が思ってるより
菜穂子さんの病気は
ずっと重いのよ
。
私
これでも医者の卵だから
少しは分かるわ
。
菜穂子さん
ニイ兄を安心させたくて
毎朝
お化粧して頬紅を
さしたりしてるの分かってるの
私
菜穂子さん大好き
とてもいい人
。
このままじゃ
かわいそう…
。
山の病院へ戻るのは無理なの?
うん
。
僕らは今
一日一日を
とても大切に生きているんだよ
。
もうおやすみ
来てくれて嬉しかったよ
。
ただいま
。
おかえりなさい
。
寝てて
。
いいのかい?
加代さんが来てくださったの
。
ああ
。
私たち
すぐ仲良しになっちゃった
。
キラキラして
未来がいっぱい詰まった
お日さまみたいな人ね
。
次は
お休みを取って
お医者さん
として来てくださるそうよ
。
それにね
お母様が私に肌着と
寝間着を縫ってくださったの
。
これ
とても暖かいの
。
まぶしくない?
大丈夫よ
。
明日までに
決めなきゃいけないんだ
。
サバの骨?
ハハ…
覚えたね
。
工夫すれば
もうちょっと
軽くできそうなんだ
。
もっと近くに来て
。
ん?
うん…
。
手をください
。
お仕事をしている時の二郎さんの
顔を見てるの
好きなの
。
片手で計算尺を扱う
コンクールがあったら
僕は
きっと1位になるね
。
うまく行きそうだよ
5匁くらい軽くなりそうだ
。
そう
よかった
。
30本で150匁だ
。
多過ぎますわ
。
2人分だったら
その半分でいいわ
。
骨だからね
。
サバだったら
僕は
そのくらい食べられるよ
。
こうしててあげるから
もうおやすみ
。
離さない?
うん
離さないよ
。
タバコ吸いたい
ちょっと離しちゃダメ?
ダメ
ここで吸って
。
ダメだよ
。
いい
。
(
マッチを擦る音
)
(
鋲を打ち込む音
)
やぁ
本庄
。
(
本庄
)
見ていいか?
うん
。
本庄の飛行機
評判だな
。
(
本庄
)
まぁな
。
こりゃあ
アバンギャルドだ
思い切ったな
。
これが噂の沈頭鋲か
。
ベコベコだな
。
工作が
まだ不慣れなんだ
。
いやぁ
二郎らしいや
。
俺みたいに
ユンカースかぶれしてないよ
。
こりゃあ
全部
サバの骨だな
。
いい感じだ
。
二郎
沈頭鋲
俺にも使わせろ
それに
あの点検孔のハッチも
。
うん
いいよ
。
爆撃機?
新しく設計させろと言ったんだが
胴体だけ
いじれと言うんだ
。
あの主翼のままか
。
ほとんどが燃料タンクだ
23発で火ダルマだよ
。
もっとも
防弾タンクなんぞ
研究したこともないからな
。
海軍は
日本で初めて
まともに
飛ぶ飛行機が出来たと有頂天だ
。
むき出しの爆弾をぶら下げて
銃座をつけて
3000キロを飛ぶんだ
。
少しぐらいのパワーアップでは
間に合わん
。
(
機銃音
)
(
機銃音
)
どこと戦争をするのかな
。
中国
ソ連
イギリス
オランダ
アメリカ
。
ハレツだな
。
俺たちは武器商人じゃない
いい飛行機をつくりたいだけだ
。
そうだな
。
じゃあな
お前ちょっと寝ろ
。
ああ
本庄もな
。
お先に失礼します
。
お疲れさま
。
はい
。
おかえりなさい
。
終わったよ
あとは飛ばすだけだ
。
ご苦労さま
おめでとうございます
。
牛に引かれて飛行場へ行ったよ
。
ちょっと向こうに
泊まり込みになりそうだ
。
お疲れでしょう
。
ちょっとね…
。
きっと
ちゃんと飛びますよ
。
うん
飛ぶよ…
。
菜穂子がいてくれたおかげだよ…
。
二郎さん
大好き
。
菜穂子…
。
いってくる
。
ご成功を
。
あら
菜穂子さん
。
お姉様
今朝は気分がいいので
この辺りを
ちょっと散歩して来ます
。
そう
無理をしないでね
。
ええ
。
お部屋を散らかしたままなの
戻ってから片付けますから
。
分かりましたよ
いってらっしゃい
。
今日は加代さんが来る日よ
楽しみね
。
ええ…
いってきます
。
ハッ!
どうぞ
お上がりになって
。
あぁ
やっぱり…
。
お姉様
手紙が!
私に宛てたものもあります
。
お姉様
菜穂子さん
山へ帰るって!
私
呼び戻して来ます!
ダメよ!
追ってはいけません!
菜穂子さんが汽車に乗るまで
そっとしてあげましょう
。
美しいところだけ
好きな人に見てもらったのね
。
(
泣き声
)
これはいいなぁ
まるで外国にいるような気分だ
。
速力は!
どれだけ出た?
(
計測員
)
すみません
計算を
やり直しています
速過ぎます!
何ノットだ?
(
計測員
)
240ノットです!
240
(スタッフ)
やった!
やった!
やった!
万歳!
万歳!
おい
二郎!
二郎!
(スタッフ)
おめでとう!
おめでとう!
素晴らしい飛行機です
ありがとう
。
やぁ
来たな
日本の少年
。
カプローニさん
。
ここは私たちが
最初にお会いした草原ですね
。
我々の夢の王国だ
。
地獄かと思いました
。
ちょっと違うが
同じようなものかな
。
君の10年は
どうだったかね
力を尽くしたかね
。
はい
終わりはズタズタでしたが
。
国を滅ぼしたんだからな
。
あれだね
君のゼロは
。
美しいな
いい仕事だ
。
1機も戻って来ませんでした
。
征きて帰りしものなし
。
飛行機は美しくも呪われた夢だ
。
大空は
みな呑み込んでしまう
。
君を待っていた人がいる
。
菜穂子…
。
ここで君が来るのを
ずっと待っていた
。
あなた
生きて
。
生きて…
。
うん
うん…
。
行ってしまったな
。
美しい風のような人だ
。
ありがとう…
ありがとう…
。
君は生きねばならん
。
その前に寄ってかないか
。
いいワインがあるんだ
。
『
ひこうき雲
』
白い坂道が
空まで続いていた
ゆらゆらかげろうが
あの子を包む
誰も気づかず
ただひとり
あの子は昇ってゆく
何もおそれない
そして舞い上がる
空に憧れて
空をかけてゆく
あの子の命は
ひこうき雲
高いあの窓で
あの子は死ぬ前も
空をみていたの
今は
わからない
ほかの人には
わからない
あまりにも若すぎたと
ただ思うだけ
けれど
しあわせ
空に憧れて
空をかけてゆく
あの子の命は
ひこうき雲
空に憧れて
空をかけてゆく
あの子の命は
ひこうき雲
ジブリアニメ映画「風立ちぬ」ネタバレ感想やあらすじまとめ
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