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陸王のモデル企業やアトランティスとアシックスの関係について
池井戸潤作品の「陸王」がドラマ化されて10月から放送を開始します。この「陸王」は、老舗足袋会社「こはぜ屋」の社長の宮沢鉱一が、先細りしていく自分の会社を立て直すためにプロジェクトを立ち上げて奮闘していく話です。この作品では2つの会社が登場します。今回はそこにスポットを当てていこうと思います。
「こはぜ屋」のモデルになったのは「きねや足袋」?

なぜそう考えるのかというと、作中に「こはぜ屋」の開発した「陸王」というシューズが出てくるのですが、それのモデルとなったと思われる「MUTEKI」というシューズが「きねや足袋」から販売されているのです。

「きねや足袋」は、『陸王』のモデルとなった埼玉県行田市に実在する会社です。そこのサイトを見てみると、2013年にこの『陸王』の作者である池井戸潤が取材をした、との記載がされていました。
それではこの「きねや足袋」が「こはぜ屋」のモデルとなった企業で間違いないかというと、どうやらそうでもないようです。
池井戸潤がTwitterでツイートしていたのですが、「きねや足袋」には池井戸潤が取材に訪れたというだけであって、『陸王』は完全にオリジナルストーリーだというのです。すなわち、モデルとなる会社や企業は存在しないということです。残念です。
工場シーンの描写のため、「きねや足袋」さんの工場を1時間ほど見学させていただいたことがありますが、丁度ランニング足袋を開発中で、その偶然に驚きました。きねや足袋さんは「陸王」のモデルではありませんが、親戚のような関係です(´ω`)♪ https://t.co/ksmQfOhHtd
— オフィスIKEIDO (@officeikeido) 2016年8月2日
つまり、「こはぜ屋」のモデルが「きねや足袋」だと断定するには、「きねや足袋」では冒頭で述べた「MUTEKI」が販売されているからということと、池井戸潤が取材をしていた、ということだけでは不十分だということですね。
池井戸潤の作品の面白さは、登場人物や風景描写のリアルさにあると評価されているため、そのリアルさに現実のモデルが現れているのではないか、と推測していたのですが、どうやら当てが外れたようです。
ライバル企業「アトランティス」のモデルはあの「アシックス」?

この「陸王」の中で、主人公の会社である「こはぜ屋」と競い合うライバル企業として登場するのが「アトランティス」です。
その「アトランティス」のモデル企業はあの「アシックス」だと言われています。
そこでなぜそう言われるのか調べてみたところ、思わぬ情報が出てきました。
作中に「アトランティス」でシューフィッターと呼ばれる、その人の足に合った靴を選ぶ職人として働く、「村野」という人が登場するのですが、その「村野」にモデルがいたのです。
それがなんと「アシックス」で競技用のオーダーメイドシューズを作っていた三村仁司という人です。

彼は高橋尚子、瀬古利彦、谷口浩美といったオリンピックにも出場した選手の靴を作ったと言われています。
そんな「アシックス」の立役者の一人である三村仁司をモデルとした「村野」がいるわけですから、当然「アトランティス」のモデルも「アシックス」だと推測されるでしょう。
しかし、三村仁司はアシックスを退社した後、独立しアディダスで靴制作を行なっています。
それを考えると、モデルが「アシックス」なのか「アディダス」なのか、結局のところ結論付けることは出来ませんね。両者とも、「アトランティス」と同じで、アから始まりスで終わるというところも一緒ですし(笑)
しかし、「村野」のモデルが「三村仁司」であることは、マラソン選手に親身なサポートをし、結果を残してきたという点で、ほぼ確実であると推測できます。
また、どちらか片方ではなく、両者を組み合わせたうえで、「アトランティス」と名付けたという可能性も考えられますね。
まとめ
ここまでで分かってきたことをまとめると、「こはぜ屋」は「きねや足袋」がモデルというわけではなく、ライバルである「アトランティス」もまた「アシックス」がモデルとは言い難いということです。
結局のところ、作者の池井戸潤が言っているように、「陸王」はオリジナルストーリーであり、完全にフィクションなのです。
しかし、個人的な見解としては、様々なところに取材に行って書きあげた小説であるわけですから、完全なオリジナルと言うのはどうかな、なんて思ってしまいます。
フィクションであっても、取材をした様々な人や見てきたモノの影響を多分に受けており、そうして出来た作品にはそれらの意志が宿っていると私は考えています。
そういった意味では、「陸王」という作品には様々なモデルがあり、「きねや足袋」や「アシックス」もモデルの一部であると言えるのではないでしょうか。